« 2018年9月30日 - 2018年10月6日 | トップページ | 2018年10月14日 - 2018年10月20日 »

2018年10月7日 - 2018年10月13日

2018年10月12日 (金)

【酒の部】福島県岩瀬郡天栄村・松崎酒造店「廣戸川」を、松本市「厨十兵衛」にて味わう件。

 
 
ナガブロ「酒 宗夜・小盛り」との連動企画。
こちらは当日の主役、日本酒の部。
 
 
えー…
誘惑箇所の多い中でございます。
いっぱいのお運び様で、誠にありがとう存じます。
気楽なところが、よろしいんじゃないか…ってンですが、
一生懸命、申し上げる事としてございます。
どうぞ終いまでごゆっくり、お付き合いを願っておきますが…。
 
言葉で端的に表しますてぇと、なかなかに恐ろしいものではございますが、
 
1年で酒が落ちる…と言うことはあり、
けれど、1年で酒が化ける…と言うことはなかなか無い。
 
「化ける」は落語や歌舞伎、芸事の符丁ですね。
「良くなる」と言う意味。
日本酒だけではなく、芸だろうとなんだろうと、
いわゆる社会で言う「信頼」と言うものだって、
得るまでは長く時間が掛かるもので、
失うには、ほんの一瞬で良いとは、よく申しますけれど…
 
えー…
何もお酒呑みのお噂の前に、
婚礼の祝辞の様に、長々と説法を説くことも、まぁ無粋なもので。
 
「廣戸川」は美味しいですね。美味しい日本酒です。
世間の評価も高い。プロの方、飲食店さんも重宝しますし、
口コミでも上々です。
「化けた」…と言うと、何だか違う心持ちです。
変わったんじゃあない。
最初から良いものがあり、
杜氏である松崎祐行さんの努力によって、
突飛に「化ける」のではなく、着実に前年を越えて来た。
一歩一歩、美味しさを確かにして、挑戦も繰り返し、酒造りに勤しんで来た。
そう言うことなんじゃねェかと…お伝えしたい訳でして。
 
 
おかえりなさい、松本へ。
 
昨年も催された「厨十兵衛」での日本酒会。
 
昨年と比べて、より良くなった。
品質も良くなったと思うのだけれど、
そうした素人目には分からない技術的なものでなくて、
僕ら、日々のお酒呑みの暮らしの中、
日本酒を扱う居酒屋さんの活躍もあったりして、
「五臓六腑が馴染む」と言うか…また、更に「廣戸川」が好きになる。
 
しみじみと、すごく、以下の様に思い、帰宅後に筆を取りました。
 
Img_0542
 
穏やかに、和やかに、いつもそこに在る一升瓶。廣戸川
 
僕はね、「酒は芸術品」と言う言葉が最近、似合わないと思うのです。
1升瓶で何万円にもなるお酒はある。
それでなくとも、芸術品の様な酒はある。
「芸術品で腹は満たされない」と言う。
人と人との間に、お酒は存在していて、
神と神の間にあるものではないんだと思う。
手が届かなければお酒はお酒ではないのではないか。
 
日々の生活に、特別な食卓に、生活の中に根付いているか。
特別な食卓に芸術品の様な日本酒があっても良い。
けれど、“様な”で留めて欲しい。
食事代をも凌駕する価格にまで釣り上がってしまったら、
もはや、食事が“ついで”にしか扱われないのではないか。
 
「廣戸川」は、特別な時にも日常の中にも合う。
もっと言えば、特別な時に並べた日本酒の中に、
幾本も呑み比べる贅沢な会があったとして、
その中にもきっと居て、いつもの美味しさであって、
煌びやかな高級酒の中にいても、変わらずに美味しいんだろうな…と思う。
 
○:日常に合う酒
△:特別な時にしか合わない酒
◎:日常にも特別な時にも合う酒
 
…と言う認識なんです。僕は。
日本酒と言う素晴らしい文化が、生活に根付いて欲しい。
 
だから、あれですよ。八幡屋磯五郎みたいなことを言いたい。
 
そして、感じ取ったつもり。
 
“いつも我が家の食卓に置いておきたい酒である”…と。
 
 
Img_0522
 
「厨十兵衛」に着く。
 
もう皆さんお揃いで。
お料理はお弁当の中にあります。
こちらは、ナガブロにて書いております「小盛り」にて、
蓋を開けて参りますので、是非、そちらをご覧頂ければ。
 
Img_0524
 
福島県岩瀬郡天栄村から遥々、ようこそ松本へ、再び。
「廣戸川」松崎酒造店、杜氏の松崎祐行さんの背中。
 
 
Img_0539
 
今回は、全5種類の「廣戸川」を飲み比べます。
例によって、いつも通りにメモを書き起こして行きます。
 
【 廣戸川・純米大吟醸酒 】
(夢の香、TM-1酵母)
 
酸とリンゴ、甘味と白ぶどう。
深さ、旨み。
滑らかな質感。
旨み&ふくらみの中から、米味。
浮きつ消えつつ、酸が太く入って来る。
ジッとした渋さもあり、
渋さを感じられると、グッと旨味が身に入って来る印象。
大吟醸とは異なるイメージ。
ゆっくり太く飲んで行く感覚で、
飲み口、飲み上がりはいつもソッとして卒が無い感じ。
 
 
【 廣戸川・大吟醸酒 】
(夢の香、M310酵母)
良い香。
澄んでいて、軽く、酸のあるタイプのリンゴ。
次いで、マスカット的な甘味のある香へ。
くどさを廃する様な爽やかな雰囲気の香。
 
飲むと、ふわっと入って甘く、
スーッとして、柔和さを感じながら、スッキリ。
上手な造り。バランスがあり、酸もあるけれど、
酸による重さや渋味の残りなどが無い。
雑さがない日本酒、味具合。
純米大吟醸と比べると、太さ…太くしなやかな芯部が、
こちらにはスマートさのために、加えられていない印象。
米甘さが少ないが、温度が上がって来ても美味しいだろうし、
上がって来るだろう期待を持つ風合。
 
 
【 廣戸川・純米吟醸酒 】
(夢の香、TM-1酵母)
 
甘味。ポッと口中で開いて、奥から別の硬質さが出て来る。
ジッと慈しむ梨様の旨さ。
辛味、酸、渋味がしっかりと表現されていて、美味しい。
綺麗ではあるけれど、クールになり過ぎていない感じ。
 
YOKOさんは「純米吟醸、とても綺麗。優しくて良い」とのこと。
 
 
 
 
【 廣戸川・特別純米酒 】
(夢の香、TM-1酵母)
 
 
“「特別純米」があるからこそ、今があると思っている”
 
…とは松崎さん。
「今では、定番になりました」と言います。
地酒へのこだわり、食卓と言う日々の文化に溶け込むお酒。
松崎さんが杜氏になってから、
素材も酵母も変えていない造りで、
50本の仕込みの中で、3分の1は特別純米酒に宛がわれる。
“いちばん気を使うお酒”と言う。
 
そう、まさに「廣戸川」のフラッグシップ。
 
YOKOさんが「食事と一緒が美味しいお酒だね」と言う。
僕はそれに対して「ダラダラ飲むお酒だね。ずっとね」と返した。
 
人間、そんなに食べ続けられる訳ではないので、
時間のすごし方では自分の方が長いのかも。
 
YOKOさんは「お酒、辛く感じるかも」と言う。
ここまでの流れからも、
「廣戸川」には優しい甘味を拾う場合が多かったが、
少しだけバナナ香が立ち、後に、ふっくら。
旨味、甘味がきちんと感じられ、
後半にアルコール感と辛さが走って、柔らかくキレがある。
口中に甘味の余韻があり、これにくどさはない。
 
 
大吟醸級2種類も、とても美味しかったけれど、
特別純米酒、純米吟醸酒を味わっているうちに、
やはり、一升瓶で付き合うべきお酒だろうなぁ…と感じ始めます。
 
昨年からの1年の中には、
4合瓶をもっと活用しようと言う取り組みを興した方がおられたり、
秋田・新政は以前から進んで来ておりましたが、
奈良・風の森は4合瓶のみの取り扱いにするなど、
ちょっとずつ時代の変化が見受けられます。
長野・岩清水も、4合瓶が多くなったでしょうか。
 
松崎さんが、とても良い表現をされていて、
「うちの酒は、のびしろがある酒だと思うんです」と言う…
これがいたく気に入りました。
ケイスケホンダが、どうのこうの…って事ではなく、
一升瓶で付き合う、1日では流石に飲み干せない、
翌日、翌々日も同じお酒となるのだけれど、
「のびしろ」がある…
また別の表情を見せてくれて、かつ美味しい。そうした側面があると言う。
 
分かります。お酒は生き物です。
火入れで酵素を失活させるとか、そう言う事ではなく、
開栓して空気に触れる中で、変化するのです。
 
最近の4合瓶で発売される日本酒、特に発泡性が絡むお酒の多くは、
逆の発想で、
「味わいの変化が少ないうちに飲んで欲しい」と言う、
ボトル売り、飲み切りのお酒…と言う販売方針で、
どちらも、ご自身の酒質にきちんと向き合っているのだと感じます。
何も一升が良い、四合が良いと言いたいのではなく、
お酒にあった発売の形態があるんだなぁ…と言う。
「廣戸川」は、一升瓶でゆっくりと共にありたいタイプではないか…と。
 
実際に醸造の中心におられる松崎さんと、今回もお話をさせて頂いて、
メディア、SNSから得られる情報以上に、
すごく説得力があるお酒とお酒との付き合い方の理論を、
目の当たりにしたように感じたんです。
 
ご自身のお酒の魅力を、やっぱりいちばん理解してらっしゃるんだなぁ…と。
 
 
【 廣戸川・純米酒“秋上がり” 】
(夢の香、TM-1酵母)
 
YOKOさんは「だんだん綺麗になる」と感じたお酒。
秋のお酒と言うこともあるのか、
温かい料理、根菜類、秋口の旨口寄りに、
秋刀魚など脂の乗ったものに、
ゆくゆく綺麗に感じる酒質が、
ペアリング…と言うよりは、
食べ物を美味しく感じさせてくれる、
綺麗な造りを喜びに変えてくれる様に感じます。
 
少しだけセメダイン系の香味。
硬くて美味しい。
渋さがあるけれど、
感じる全てが軽くてバランスを取る事が出来ている。
 
硬さと旨さのバランスが良く、
綺麗さが際立っていて、それは雑さがない事と同義。
程好く甘旨く、甘さのあとに辛味が立ち上がる。
 
 
…と、以上、5種類の「廣戸川」の飲み比べでした。
 
 
 
他、いくつかのメモを記録として。
 
岩瀬郡天栄村は、もともとコシヒカリの栽培が有名な土地で、
高名な農家さんもあり、そんな彼らにも協力してもらって、
蔵から近い場所で育った、
福島県の酒造好適米「夢の香」を使った日本酒も醸している。
 
TM-1と言う酵母は10号系(小川酵母)の系統。
水にミネラルの多い「廣戸川」には向く様子。
(逆に会津の水では、受け入れにくい酵母なのだとか)
 
10月9日から今期の酒造りが始まる。
(つまり、もう始まっているのです)
 
天栄村唯一の蔵元さんとなる訳で、
その蔵元さんの醸造用のお米が、
醸される風土、全く同じくして在ると言う事は、
とても素晴らしいことの様に感じます。
「そうでなければならない」とは言いませんけれど、
やはり土地の恵みで醸されたものには、
土地の愛情がたっぷり染み込まれていますし、
「我が村生まれの米が日本酒になって世界へ!」となれば、
格別の喜びを生むのではないか…と想像しております。
 
 
 
深く飲み過ぎることなく、たいへんに良い心持ちで厨十兵衛を後にします。
 
何となく歩いて、
お腹はいっぱいだし、〆は必要ないけれども、
何か落とし所が欲しいなぁ…と、そして。
 
Img_0541
 
駅前大通りの「High Five COFFEE STAND」へ。
 
Img_0540
 
YOKOさんに、今期も終わりの「レモンコーヒー」を飲んでもらえてラッキーでした。
紅茶にレモンは一般認知されているけれど、
レモンとコーヒーは、知られていませんよね。
その美味しさ、風味は、
どこかで出会ってもらえたら…って思っていましたから。
 
 
 
Img_0543
 
 
帰宅後に「廣戸川」を自書。
冒頭のものが筆ペンで、こちらが現在練習中の毛筆にて。
 
思いが乗ると、いつもの自分より、
ちょっとだけ上手く書くことが出来ると思っています。
感謝を込めて、来年の再会を願って。
 
1年と言うものは、今となってはあっという間に過ぎて行くけれど、
1年と言うものの中には、様々なドラマや変化がある訳で。
 
例えば、この字も来年はもっと上手に書くことが出来たら良いなぁ。
 
また、美味しく「厨十兵衛」で「廣戸川」を楽しんだ後に。
 
 
 
さて、本日は私が掃除番となっておりまして、
これにてお開きとなっております。
松本市の日本酒居酒屋さんでは、
「廣戸川」を扱うお店もございます。
どちらかで、お目に留まりましたら、是非ご注文を。
ここで、お付き合い頂きました…聞いて頂きました、
その美味しさの一端を味わって頂く事が叶いますと、
心から幸いと存じます。
 
それでは、これにて。
 
ありがとうございました。
 
ありがとうございました。
 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2018年10月 9日 (火)

広島・雨後の月・純米吟醸ひやおろし“八反”

 
 
Img_0554
 
綺麗でシャンとしていて、
YOKOさん共々、とても良い印象で飲み干しております。
「また、雨後の月と言う広島の日本酒を飲みたいな」と思わせるに、十二分。
 
武蔵境・酒のなかがわさんより、お取り寄せ。
 
 
スペックとしては、
広島県の酒造好適米「八反35号」を主体に使っております。
八反35号を78%、山田錦を21%、協会901号酵母…とは裏ラベルより。
精米歩合は50%ですので、「純米大吟醸」と名乗っても良いクラス。
 
 
上立香は、少しアルコール感のあるキンとした芳しさがあるもの。
 
飲んでみると、
瑞々しいナシを連想しました。メモの一言目は「ナシ!」です。
ナシ感と共にミネラル感も軽やかに感じられて、
明るいお酒。すごく美味しい。飲んでいて、更に旨さが膨らんで来る。
後半に少しだけ渋味を置いて行くところが、何とも言えず、心地良い。
 
エメラルド色を想像します。明るさ軽さ、しかし充実。
塩気までは行かないけれど、膨らむ中でボディが和やかに広がって、
料理にしても、和らぎ水を飲んだ時にも、
「ちゃんと雨後の月が口の中に居てくれる」安心感があります。
 
しばらく飲んで端的に表現するならどうしようか…
そう思い巡らした結果は「くず湯」かしら、と。
優しくて広がり良くて、五臓六腑への染み込みの気持ち良さを感じて、
クリーミィさ、まろやかさまで感じさせて、
でもナシ様の瑞々しさもあるんだから、
本当に「雨後の月、すごいなー!」って思わせます。
 
YOKOさんも「甘くて美味しい。白ブドウ系でフルーティ」とのこと。
とても好感触。
 
 
FBで今、広島で勤務されているN尾さんから、
「雨後の月」の良さもお墨付きを頂きながら、
「白鴻」も良いですよー…なんて情報を頂きました。
ずっと前に飲んだことが確かあり、
なるほど、「白鴻」も綺麗で軽くて、飲ませる味わいだったなぁ…
…なんて思い出します。
週末は「西条酒まつり」が催されていた、
日本酒の聖都と謳っても過言になりはしないだろう広島県。
ラベルの字を書く日が楽しみだなぁ。
 
…全蔵調べて、リストアップして、静岡の次に行こうかな。
とにかく、楽しみっ。
これからも広島酒も飲んでみたいと思いました。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2018年9月30日 - 2018年10月6日 | トップページ | 2018年10月14日 - 2018年10月20日 »