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2013年12月29日 - 2014年1月4日

2013年12月31日 (火)

第20回 食酒楽会(2013年11月15日・三幸軒)



えー、
誘惑箇所の多い中、
いっぱいのお運び様で、誠にありがとうございます。
気楽なところがよろしいんじゃないか…てンですが、
一生懸命に書いて行く事にしております。
今回は殊更に、
思いをありったけ込めますので、長講一席となりますが、
どうぞ最後まで、ごゆっくり、お気を確かに、
お互い、頑張ろうじゃありませんか。
さぁ、お付き合い下さいませ。

えー…「三位一体」と言う言葉…よく耳にする言葉ですよねぇ。
三角形は、どの辺が歪んでも三角形にならないんですね。
余分があれば、角が立つ、不足があれば、角にもならない。
お古い時代から、
「三人寄れば文殊の知恵」なんて事も申しますように、
この「3」と言う数字は、何かと重宝されておりますよ。
果てはシルクロードの遥か先、エジプトの文明なんかも、
ピラミッド…なんてね、三角形の親方みてぇなもンなんですから、
ね、この「3」が、それぞれ立派に活躍した際のね、
効果てぇのは、何事にも替え難く、成り難し。

今回、万事めでたく…
第20回を迎えました信州中野は「食酒楽会」、
足掛け6年で迎えた、それは”ご偉業”と謳って、どなた様も異論はございますまい。
アタシ達は、1年に1度くらい、全20回の中で、
今回を含めまして、たった7回のお付き合いとなってはおりますが…
…それでも、それでもですよ、
1回1回がとても思い出深く、そして何より美味しかった。
当方、ご覧の通り噺の調子で、こうして書いて、
そして、皆々様に読んで頂いておりますが、
共に、電子上の身の上ですんでネ、リンクを貼れば、
どなた様にも振り返って頂けますよ。ね、文明てのは便利になりましたな。

えー、では、
ちょいと振り返ってみましょうか。

第2回・食酒楽会、岩清水の新酒を味わう!(2009年2月27日・三幸軒)
( http://sake-soja.cocolog-nifty.com/blog/2009/03/2009227-cefb.html )

第10回・食酒楽会(2010年9月3日・中野市三幸軒)
( http://sake-soja.cocolog-nifty.com/blog/2010/10/10201093-9e63.html )

第14回・食酒楽会(2011年11月4日・中野三幸軒)
( http://sake-soja.cocolog-nifty.com/blog/2011/12/142011114-64c5.html )

第16回 食酒楽会 (2012年6月29日・中野市三幸軒)
( http://sake-soja.cocolog-nifty.com/blog/2012/07/16-2012629-c1fd.html )

第18回・食酒楽会  一滴入魂・一食入魂  (2013年2月22日・中野市三幸軒)
( http://sake-soja.cocolog-nifty.com/blog/2013/03/18-2013222-b6bc.html )

第19回・食酒楽会(2013年6月28日・三幸軒+白根山観光)
( http://sake-soja.cocolog-nifty.com/blog/2013/07/192013628-fa5e.html )

酒造りに熱い思いがある。
笑顔の為に、一生懸命に練りに練られた料理がある。
感じる訳です。感じないではいられない訳です。
会の前には、何度もミーティングがあるそうですよ。
出すお酒の提案がある、お酒に合わせた肴の…料理の案がある、
実際に試して、お三方が話し合って、修正する…
より良いものになって行く。

「いいよね、こんなんで」「まぁー…いいんじゃない?」

そんなナマッチョロイもんじゃナイと存じますよ。
練りに練り上げる、積極的な意見交換がされていると思うんです。
でなければ、でなければね、僕らがこんなにも通わないと思います。
20回も続かないと思うんですよ。
まだまだこれから会を重ねて行こうだなんて機運になりませんよね?
人を喜ばせるって事は、並大抵の…けして容易な事じゃありません。
それは皆様、ご案内の通りでございましょう。
どなた様もご苦労様されて、今がある…歌の歌詞にもありそうな案配ですな。

「俺ぁ、この料理が通らなければ腹を切る!」
「俺の酒をもっと光らせる料理を作れないと抜かしやがるのか!」
「てめぇらぁ!血なまぐさいのは、生魚だけにしておけー!」

…なんて、こんな物騒にする事ぁないんですが。

始まる際の口上で、善光寺屋の旦那は言いました。

「最初は手探りで始め…」

…「手探り」であったものは、
「手探り」から、確かな「手造り」に、
それぞれのプロフェッショナルが、良い知恵を持ち合って、
より良い会を目指して、1歩1歩進んで来た…
そうして迎えた20回の喜ばしさは、
本当にね、掛け替えの無いものでございます。
どんなに頑張ったってね、時間と努力は買えないものですよ。
そうでしょう?
常に築き上げて、常に積み重ねて作って行くものですよ。
成果がある…
言葉では語り尽くせない程の思いの思いの集大成ですよ。

信州中野でじっくり体感して来ました。
忘れちゃいけねぇのは、これが最後じゃあないってぇ…ことです。
まだまだ伸びて行く…と言うことなんです。
どこまでどう、美味しさが、楽しさがね、
溢れて、溢れ返って、アタシ達をたまらなくしてくれるか…
どうなっちゃうのか分からない、
ええ、無限大の世界があります。希望があるんです。
あのお三方の背中を見ておりますてぇと…
ええ、
必ずや良い方向に進んで行く、そう確信致します。

今後ともお付き合いを願いたい、素晴しい会。
再三申し上げておりますが、
その名も「食酒楽会」でございます。
是非、お初にお耳に達しました方には覚えてお帰りを願いたい。
「食酒楽会」でございます。
夢があります。この場所には。

本日の一席は、記録です。
本来のところは五感で味わうべき、味覚の記憶です。
味はおそらく伝わり切らないでしょう。
どんな文章も、あの美味しさには追いつけませんや。
けれど!けれども、
見てきた「夢」は、
必ずや伝わると信じて、書いて行きたいと存じます。

お支度調いまして、口上、まずはここまで。

ひとつの「夢」を申し上げます。

どうぞ、最後までお付き合い下さいませ。


食と日本酒の饗宴
第20回・食酒楽会「原点回帰!」

食酒楽会とは、
人生を豊かにする食と酒をより楽しんで頂ける様、
それぞれのプロが工夫を凝らしておもてなしをする会です。

( 食酒楽会パンフレットより )


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雪の降る週…と言う事で、
念の為、早めにスタッドレスタイヤに換装して訪れた中野。
後々、Y本さんに伺うと、
やっぱり週の始めは、しっかり降ったらしい。
そう言えば、全国版のニュースで、信濃町妙高と大雪となったと聞いた。
隣接する中野市も、もちろん雪を迎えている…と言う事だろう。

無事に宿泊地に着き、中野市「三幸軒」へ。
外観の電灯は暗く、明るい黄色の壁は渋味を増した色に見える。
直前の「三幸軒ブログ」によれば、今日は「貸し切り」となっている様だ。
今日に掛ける思い、気合の入った料理を用意するつもりだ…と、
そう思う。そして、だからこそ今日の外観が暗いのだから、
「食酒楽会」に参加する自分としては、何だか嬉しい。

今回、第20回のパンフレット。
食とお酒でのおもてなし、「今回のプレミア」、テーマは以下。

【 今回のプレミア 】
食:旬の食材と地元特産食材を用い、こだわりと工夫を凝らしたメニューでお楽しみ頂きます。
酒:お蔵が目指す「食に寄り添うお酒」の数々。個性豊かに揃えました。

表紙に大きく書かれている「原点回帰」と言うテーマに沿った”プレミア”と感じます。
初回、2009年の自分が、「食酒楽会」に訪れた目的は、
中野市の銘酒「岩清水」が好きだから、興味があるから…
ただ、それだけだったのに、
今では「三幸軒」上野さんのお料理も、心から楽しみにしています。

お酒と食のマリアージュ、組み合わせて美味しいって言うものは、
美味しいもの同士を、ただ出せば、必ずや美味しいって事ではないんです。
美味しい”1”と”1”同士で、”2”になるだけ。
6年前、東京での日本酒会、蔵元を囲む会に、
何度か通っていた時分、
「お酒を楽しむ事がメインで、料理は合いの手くらい」
…それで良い、目的は達している、不満はありませんでしたよ。
どちらも美味しいんですから。
(ただ、その時代は、そうした会の黎明期で、今ではもっと進化していると思います)

上野さんの料理は、”2”より上の世界を目指しているんですね。
組み合わせる意義を感じる、
こう言う合わせ方が美味しいんだー…って発見する嬉しさ。

初めてYOKOさんが参加した第10回の光景を今でも覚えています。
YOKOさんは初めての参加、まわりは知らない方ばかり。
小古井さんに会う事だって、滅多に無かった頃だと思います。

「本当に、本当に美味しい!合わせて美味しいんだ!」

…ってね。とても楽しそうに食べて飲んで。
緊張を通り越して、夢中になっていて、
そんな喜ぶ姿を見て、
「あぁ、一緒に来て良かったんだ」と思いました。
あの日の、安堵と歓喜の気持ちは、今でも深く覚えています。

今回のテーマ「原点回帰」、
これに合わせた「今回のプレミア」は、
「食酒楽会」の「食」と「酒」を「楽」しむ「会」の
本質を表しているものだと感じました。

「食酒楽会」のパンフレットには、
それぞれのお料理について、コメントが掲載されています。
料理、お酒の名前のあとに書き添えてある「コメント」は、
パンフレットより転載させて頂いております。

【 本日のおもてなし 】

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パンフレットに”個性豊かに揃えました”…とある通り
銘酒「岩清水」が5種類、用意されていました。
会が進むに従って、料理と共に提供されます。

【 岩清水・辛口本醸造・火入れ 】
コメント:封切から時間が経つと味わいが変化するワインの様なお酒

「先一杯」、
善光寺屋の旦那に席へ案内して頂き、
すぐに注いでもらった”ウエルカムドリンク”、
「岩清水・本醸造」にて、会の始まる刻限を待ちます。

これまでの「ウェルカムドリンク」と言うものは、
甘酒なんて会もありましたが、
(この甘酒は天之美禄の体現か!…と驚く程の美味でした)
比較的、アペリティフ、食前酒に近い雰囲気、
ライトテイストのお酒が多く、その先入観が僕自身も強くあり、
「本醸造酒」と聞いて、
殊更、食と共にあるべき酒質の多い”区分”なので、
「おやっ?」と思ってしまいました。

けれど、けれども、
口にした「岩清水・本醸造」は、
スッキリした雰囲気、淡白な色を持ちながら、
甘味と柔らかさ、くどく無い後味のバランスが素晴らしく、
ほっと和ませる味わいでした。
自分の先入観の怖さを改めて知ります。
「おやっ」と思ってしまった様な、
イメージの上の「本醸造酒」を遥かに超えて、
個性のある、粋な特長を、世界を持つ日本酒でした。

そう言えば、僕らが多く出会ってきた「岩清水」は
「無濾過瓶火入れ」シリーズが主体で、
「中野土びな」や、
こうしたクラシックスタイルのラベルの「本醸造」は、
あまり飲んだ事が無かった事にも気付きます。

杜氏・小古井宗一さんの努力、研鑽は、
毎年毎年美味しくなって行くお酒に、よく表されています。
「一滴入魂」の御旗の元、
全てのお酒に抜かり無く魂が入っている、美味しいんだと思う事が出来ます。

「本醸造酒」と言うお酒は、リーズナブルなお酒です。
どちらかと言えば、お安いです。
悲しいかな、”安かろう悪かろう”、
”腹に入れば皆同じ”…と見てしまう場合もある世の中で、
この美味しさは、本当に輝ける存在だと感じました。

最大の特徴は甘味の伸び、余韻の優しさ、全体の和やかな雰囲気。
こうした美味しい本醸造酒が、
もっともっと世間に普及すれば、
もっともっと生活に、食卓に日本酒が登場すると思います。

YOKOさんは、
「香りがある感じ。最初は辛口っぽいと思ったのだけれど、
  今は甘味も感じられて美味しい」…とのこと。

日本酒居酒屋に行くと、
主力は「純米」か「吟醸」、そして「純米吟醸」あたり。
でも時々、出会います。
今日の様に、美味しい「本醸造酒」に。

「  あぁ、早くお料理と共に楽しみたいぞ!  」

そう思わないではいられませんでした。

【 乾杯 】
【 岩清水・特別純米五割麹ひやおろし 】

コメント:出ました!井賀屋酒造場の大人気酒。濃醇甘口ながら、酒席の間に何度もまた飲みたくなる旨口酒。今回は旬の「ひやおろし」での登場です。

さて、
19時を迎え「食酒楽会」に訪れる方々も揃いました。
乾杯のため、グラスには「岩清水・五割麹」が注がれます。
透明なグラスに、やや黄色みがかったお酒。
この色合いを…この味を知っている身としては、
それだけで、胸がときめく心持ち。
匂いは、少し涼やかな風と共に、甘味と酸を感じる…
麦、香ばしさを少し持ち、軽く砂糖の匂い、
水飴の様な…鼻腔をくすぐると飲んでみたくなる、
花の蜜の様な…そんな香です。

銘々行き渡り、間も無く、開会の挨拶となるのですが…。

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珍事と申しますか、
お酒の神様は、ちょっとした意地悪をされた様で。

酒造の神様・京都嵐山の「松尾大社」に、
当日、本年度の酒造について祈願に出掛けていた、
小古井杜氏が、戻るにはもう少し…と言う道程状況。
これまでに無かった出来事で…
気を悪くしないで頂きたいのだけれど、
第20回の思い出として、
きっと今後…例えば第40回等の笑い話になるのではないでしょうか。

とにかく、無事にお戻りになる事を心から祈りながら、
式次第、善光寺屋の旦那と三幸軒・上野さんで進められて行きます。

まずは善光寺屋の旦那からの挨拶。

「6年掛け、第20回と相成りました。
最初は手探りで始めました。
お客様の笑顔のためにはどうしたら良いか。
それを考えました。
料理は料理人が、お酒は酒屋が…
それぞれのプロがそれぞれの得意な分野を大いに伸ばして、
取り組めば良いのではないか…
そうして今日まで、やって来ました。
これからも頑張って行きます」

次いで、料理人・上野さんから挨拶とお料理の説明。
今日は、それぞれの料理を運んだ際に、
一品に一言ずつ、紹介をして行くので、
ちょっとだけ耳を傾けて頂ければ…との事でした。

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挨拶の直前に運ばれて来た前菜三種について、解説があります。

「まず手前、牛肉ですが、
牛肉の上に乗っている黒いものは、それだけだと美味しくないです。
ネギのローストして炭にしたもの、
下に敷いてある白いソースはパイナップルです。
燻った炭のイメージ、そんな苦味に、
甘味酸味のソース、お肉の旨味を合わせました。

奥にあります、グラスの中には、
前々回好評だった親子カクテルです。
卵黄を甲殻類のダシで伸ばしたもので、
下に鶏チャーシューが入っていますから、
スプーンでよく混ぜてください。

左側、ホタテの紹興酒蒸しの下には、
牛蒡をオイスターソースで煮たものを敷いてあります。
上に乗っているのは、
メレンゲ…お菓子として使われるものに、スパイスを和えました。
洋食の様な見た目ですが、
あくまで中華料理として、新しい提案をする形になります。
「食酒楽会」の料理は、
一品一品、必ずどこかに、
中華料理のエッセンスを取り入れる事にしています」

説明をして頂く前から、
「親子カクテル」に関して言えば、
僕とYOKOさん、お皿の上に認めた時から、
「あ・れ・だ!!」と思っていました。
前々回、第18回の記憶は新しく、
小古井さん曰く「記憶に残る味」…その通りで、
こうして久し振りに会えて嬉しく思います。

再び善光寺屋の旦那から、乾杯酒の説明がありました。

「乾杯酒に用意しましたのは、
   パンフレットにもありますが、岩清水の人気酒である、
   五割麹のひやおろしです。
   ご覧になって頂くと分かると思いますが、
   黄色いです。本来、お酒と言うものは、こう言う色をしているはずなんです。
   透明にする、濾過をすれば透明になりますが、
   岩清水のコンセプトにもある通りで、
   濾過をせず、そのままの味わいを楽しんで欲しいと思います」

「清酒」と言う言葉は、「濾過」を意味しています。
どぶろく、にごり酒の様な醪(もろみ)を漉して清澄なお酒にするので、
「清酒」です。
この段階では、ご案内もありますでしょう、
「うすにごり」「おりがらみ」と言う半透明な色合いで、
更に「おりびき(滓引き)」をして、より透明な「清酒」に仕上げます。

江戸、明治から先、酒造技術革新の中で、
より清澄なお酒が求められ、応えられる様になり、
炭を用いての濾過を、また火落ち菌など、
日本酒にとって有害な菌類を、
フィルターを経由する事で濾過する技術が発明されました。
保存、冷蔵技術の乏しい時代には、
この濾過は必要不可欠な酒造工程とされていました。

近年、冷蔵、輸送技術の進歩もあり、
「無濾過生原酒」など、
酒蔵で酒造期にしか飲めなかったお酒が市場に広がりつつあります。
「一滴入魂」、思いを賭して醸す「岩清水」、
出来るだけ真っ直ぐに心が伝わる様に…との考えから、
「無濾過」のお酒が主軸にあります。

「岩清水・純米五割麹(黄色ラベル)」
酒造教科書的に言えば、2割3分前後とされる麹歩合(割合)を、
5割にまで引き上げ、美味しさのひとつの形を極めんと進む、
そんな井賀屋酒造場、フラッグシップと言って過言のないお酒なのです。


ええと…、善光寺屋の旦那や上野さんの口上は、
適度な長さで程好い所で「乾杯!」となったのですが、
自分が文章で、こんなに長く書いてはいけませんね。

さぁて、お待たせしました!…と乾杯に移ります。
ここからは、
それなりにテンポ良く、
お料理と日本酒の饗宴をご覧頂きたいと存じます!


「 乾杯!! 」

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「うわぁ、やっぱりウマイ!」

「おいしい!やっぱりおいしい!!」

僕とYOKOさん、夫婦ふたりでピタリと意見が合いますし、
Y本さんだって、今回同じ席にてご相伴相成りました、
K村の旦那も、皆、笑顔であります。
美味しさは必ず笑顔を作ります!

「岩清水・純米五割麹」は、
この「食酒楽会」でも、
家でも、長野酒メッセでも…至る所、異なる雰囲気で、
それぞれ飲んでいるけれど、いつでも美味しい。好みです。

甘味があり、しっかりコシがあります。
玉の様にツルンと喉通り良く、舌にまろやかさが乗り、
甘味旨味を届けながら、じっくり口中に味が広がり染みる…
甘味の旨さはたまらないのに、
酸がきっと強く、
しかし感覚として円熟の飲み応え、舌触りであるからこそ、
ダレる事無く、口にする、飲む、飲み干す、余韻にうっとりする…
全ての時間に幸せな心地を呼ぶ美味しさ。
極上の和三盆糖の様な甘味、
甘味をよく寝かせて、練りに練って造った上質な和菓子、
その甘さがあるのに、食に相対して、寄り添える胸の広さ。
本当に良いお酒であります。

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会が始まる前から卓上には、
群青色ラベルの「岩清水」が用意されていました。
「岩清水・特別純米三割麹・無濾過瓶火入れ」の5年熟成品。

まだ眠りから目覚めていないのか、
トップノートは、アルコールっぽさが先行して、強い印象。
口に含んでみると、ビリッと刺激的な鋭さと共に、
キレのある味わい、酸が非常にサバケ良く存在していて、
強く、バリッと主張して来ます。
五味の中、苦味も酒の体として、しっかり全体を支えていて、
後半に向け辛めで、強い全体の後、
余韻には、甘味が返って来る、戻って来る様な感覚。

ひとつまみの塩を加えた、ダシ、スープの様な印象を受けます。
料理と言う味を待ち構えている様な。
迎える味に、
この強い雰囲気はきっと素晴らしい融合をするだろう…と感じます。

いよいよ以って、お箸に手を伸ばし、
料理人・上野さんの粋、
「前菜三種」を食するに当たって携えた「岩清水」は、
特別純米五割麹、三割麹、本醸造…と、以上の3種類。

どこからか…いや、厨房に決まっているのですけれど、
遠くで、油の…油で揚がる匂いが漂って来ます。
次のメニュウに書いてありますよ、「コロッケ」と。
この準備が始まった…
そんな風に、心にもうひとつのワクワクを植えながら、お皿と向き合います。

【 前菜三種 】
「食酒楽会」がお勧めする、
合わせるお酒は、「岩清水・特別純米三割麹」とのこと。

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食べて、楽しんで行った順に書いて行きます。

【 c 和牛の真っ黒パウダー焼き 五味(甘辛酸苦旨)の楽しみ 】
コメント:旨味の詰まった和牛に秘密の真っ黒パウダーを纏わせ、添えたフルーツソースと同時に召し上がると五味を一気にお楽しみいただけます。是非ソースを絡めてお試し下さい。

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フルーツソースは、
鼻を近付けると、パイナップルのとても芳しい匂いが届きます。
一見、色合いから、
ホースラディッシュなども合わせたソースに見えましたが、
肉より先に興味が湧いて、ちょっとだけすくう、味をみる…

「 わっ 」

紛う方無き、
想像以上にパイナップルジュースの美味しさがあります。
ソースと言うくらいだから、
加熱して煮詰めてある様な予想を立てましたが、
とてもフレッシュな香、パイナップルの甘くて明るい香が存分に感じられ、
油の雰囲気が無く、とてもさっぱりしています。
「酢豚」に加えられるパイナップルは、
勿論風味付けの要素もあるでしょうけれど、パパイン酵素によって、
お肉を柔らかく食べさせると聞きますが…
こうして別添えのソースとして出て来ると、柔らかさには関係がない訳で…。
ネギのロースト、牛肉に対して、
このデザートにも通用しそうな、
軽く、美味しい果汁100%ジュースのイメージの湧くソースは、
お肉に対して、
どう言った反応をするのだろう…、そう思います。

Dscn3349

牛肉には、牛肉らしい匂いがしっかり生きています。
とてもシンプルな味付け。
素材の色を多く残す様な…牛肉の匂い、噛んで柔らかさと共に脂、
ほんの少しの塩加減の中に、その脂の旨さが染み渡る感覚。

「  …確かに  」

“真っ黒パウダー”なるものは、確かに意味がある苦味だと思う。

炭化した、そう言う苦味じゃあないんですね。
焦がした…と言う苦さでもなく、色は黒いけれど、
とても良い加減、アクセントになる加減をキープしている。
食べていて、食べにくさは感じない。

グレービー、はたまたデミグラス?
洋食の、そうした味がしっかり付いたものとは相反して、
折り重なるように、それぞれの存在感が積層して感じられ、
香のリッチさ、爽やかさで常にあり続けるパイナップル、
この酸味が、いちばん最後に融合をもたらす鍵になっていて、
華やかでありながら、どこか苦味を背景に、
肉の甘味をさらって、締め括って行き、
それぞれがゆっくり余韻を味合わせてくれる。

たぶん、素材、
味わいがイメージさせる色の要素は豊富なのだけれど、
集約され、とてもバランス良く、シンプルに見せてくれている美味しさ。
そのシンプルさが、とてもお酒に…「岩清水」に合って来ます。
パイナップルのサッパリさとは異なる、
味わいの中で、渋味が少し膨らんで、美味しい感覚。
日本酒に必要とされる「五味」を、料理としても感じさせ、
また、日本酒と組み合わせる事で、
「五味」の表現を保ったまま、ベクトル、軸を回転させる味覚のお料理。

YOKOさんは、
「普段、居酒屋さんに行ってもお魚やお野菜が多く、
 お肉ってあんまり好んで食べていないけれど、
 これは、とても好み!美味しい!」…とのこと。

パイナップルをアクセントとして使ったソースは、
世に多くあるのでしょうけれど、
こうして主体になったソースであるのに、
とても美味しい、爽やかな驚きが嬉しいお料理です。
そうそう、東京には「パパパパパイン」と言う、
パイナップルのラーメンを出すお店があって話題なんだそうですが、
今日のパイナップル効果、美味しさを知ると、
なるほど、ただ、奇抜なものへの興味ではなく、美味しさとして興味を抱く事が出来ますね。

【 b ホタテの紹興酒蒸し・サクサク ロカイユ添え 】
コメント:紹興酒の香り良く蒸したホタテ、ゴボウのソース、ロカイユ(卵白の焼物)を一緒にどうぞ。辛口の5年熟成純米三割麹が濃厚なお料理を高めます。

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やっぱり気になってしまうのは、上に乗っている「ロカイユ」ですよネ。
メレンゲらしい、気泡がたっぷり立ち上がり、
軽く、「ふに」っとした食感の柔らかいもので、
スパイスの香が…味わった瞬間に浮かんだイメージは、
駄菓子の「キャベツ太郎」と言うか「ソース焼きそば」と言うか…
強い香、旨そうな香があります。
想像の対象は、ポテトチップスだって良いのですが、
こう、密閉された封を開けた、その時に中から匂い立つ、
香ばしい風味があるじゃありませんか。
あの、スナック菓子のいちばん旨い瞬間。
焼いたソースの匂い、甘味もあって、何とも心浮かれる匂い。
香味野菜をキツネ色になるまで炒めた様な…色んな香を拾います。

紹興酒蒸しにしたと言うホタテは、ホタテの持つ風合が、
とてもはっきりとクッキリと表現されていると感じました。
鮮烈な印象が残り、良い香、良い甘味。
メモには「ホタテってこんなに風合が良いものだったっけ?」とあります。
焼いた様な、そう蒸した様な…
醸造で登場する乾燥蒸気で蒸米の表面を乾かした様な…
おそらくは紹興酒によって、ただ蒸しただけよりも、
風味や味わいが付される事により、一層の変化が起きているのだと思います。
ホタテらしさ、特有の美徳と言える甘味ある香の存在、
また、干し貝柱でないと感じられない旨味の要素も出ている、感じられると思いました。
重厚でなく、シンプルに。
その旨味あるシンプルさが、
岩清水・特別純米三割麹の硬派な酒質に合致して、膨らみます。

紹興酒の香とロカイユの香には共通項があり、共に高め合う組み合わせ。
ホタテの火加減には十二分に気を遣った印象の食感を抱き、手仕事を感じます。

更に、下から出て来る牛蒡のオイスター煮は、
それだけで多種の料理に合わせられそうな…
例えば、奴豆腐の上に乗せただけでも美味しいんじゃないか…
また、オツマミ感覚で、
よく落語で言う「俺ぁ塩を舐めただけでも五合くらいいっちゃうんだ」…よろしく、
お酒に良く、ご飯にも良さそうな味の、風味の濃いもの。
塩気が強過ぎるのではなくて、風味が濃んです。旨煮と言う感じ。

牛蒡とホタテが出会うと、これまで感じていた甘味と別の種類の甘味を感じます。
例えるなら、先に感じた甘味は加熱前の甘味、
牛蒡が加わる事で加熱された甘味…
チョコ・アイスクリームの甘さとホットココアの甘味って違うじゃありませんか。
同じ甘味でも系統の異なる雰囲気。
牛蒡には、ちょっとだけ辛味も感じます。味は深いです。
ここに、ホタテが負けない、きちんと主張がある…
淡白さと濃厚さの両立が為されていると感じました。

上手に仕上げた、仕上げられた逸品。

たっぷりあったらありがたみが無いし、
他のものも食べられなくなっちゃうけれど、食べたい心持ちになりますね。
そして、
ちょっとした肴が欲しい時には、万能で、とても重宝すると思います。
五割麹や本醸造の柔らかい雰囲気のお酒にも良いとは思うけれど、
三割麹の様な、ビシッと強いお酒と合わせると幸せですね。
液状のソースでなく、ロカイユだからこそ、
全体的に乾いた感覚が、またお酒を楽しませてくれる様に感じました。

【 a 前菜のスペシャリテ・卵と鶏チャーシューの親子カクテル 】
コメント:以前好評だった一品です。ゆっくり火を入れた卵と鶏肉を、中華出汁のあんを混ぜてお召し上がりください。

Dscn3352

たまりません。

これほど、
見た目に美味しさが伝わり切らないお料理もないと思いますよ。
ええ、食べた事があるならば、伝わり過ぎるくらい。
また食べたい、お匙でもって、すくいたい、口に入れたい、香りたい。
写真を見て「お、卵で美味しそうじゃん」と思った方、
食べてみると、もっともっと美味しいんです。幸せな味なんです。
目では、ひいては目から情報を受けた脳では、
けして美味しさが伝わり切らない、
舌で受け止めてこそ伝わる美味しさがあります!あるんです!

茶碗蒸しをイメージされる方もいらっしゃるかも知れませんが、
蒸していないため、硬くありません。プルプルもしていません。
滑らかな舌触りの中に、鶏チャーシューなどの食感が、
プリッと絡み合い、とろとろとろり。
黄身と甲殻類のダシのみならず、鶏の旨味もあり、
黄身を黄身として食べるより遥かに美味しく、
ダシをダシとして感じるには、
永久に辿り着けないだろう旨味…けど、とても自然な旨味が一体となっていて、
恍惚の世界を呼びます。
黄身は、生でもない、火がきちんと通って白くなる訳でもない、
生と半生の中間の様な、絶妙の状態で維持されている為、
様々な風味が活きて来ていると思うんです。

更に「岩清水」によって、膨らみを持たせてもらっているのか、
より一層のダシ、融和された素材の持ち味を感じられました。
普段、生卵をゴクリ…なんて飲み干す事は出来ませんが、
生卵の風味の粋を感じながら、スープの美味しさも手伝い、
美味しく食べられる訳です。

こってり濃醇な雰囲気は、加えられる油ではなく、
食材から得ている脂…と言う感じ。無理のない旨味の凝縮感、
強過ぎない癖は、実に程好く食べさせてくれますね。
程好いからこそ、ダシの素材の香と旨味が伸びて活きる。

中華料理のエッセンスがあるからこそ…の料理だと常々思います。
日本料理ではきっと油が足りません。
黄身酢なるものもあるけれど…、そう、きっとどこか酢であったり、
塩を活かす為のあっさりした工夫をする印象。
日本料理の脂と言うものは、
鯛ダシであったり…魚の脂を上手に生かす文化だと思うのです。
逆に、欧風料理では動物の脂の強さを生かして、
しっかり強い、インパクトある中で、
脂のまろみを使ったものが多いと思います。
だからこそ、香辛料を多く使って、活きて来る味わいでね。
中華料理では、脂を工夫して仕上げる、
油マジックがバランス良く、
油をメインにして美味しく食べる調理法だと思うんです。
油を焼くのも中華料理ですし、
イタリア料理などにもニンニクの香付けこそありますが、
ネギ油や焦がしニンニク、他様々な香味付け油の多彩さ。

この親子カクテルは、
鶏チャーシューの脂、甲殻類から出るダシと脂、
もちろん卵が持つ脂の融和が絶妙なんです。

以上、前菜三種を楽しみました。
いつもいつも最初から気合の入った、情熱の伝わる料理が嬉しいです!

【 小鉢 】
「食酒楽会」がお勧めする、
合わせるお酒は、「岩清水・本醸造火入れ」とのこと。

【 海老のコロッケ・チャイニーズアメリケーヌソース 】
コメント:海老の旨味がたっぷり詰まったソースと、ホクホクじゃが芋がマッチした一品です。歓迎酒の本醸造が味幅を増して、油のコクとマッチします。岩清水マジックですね。

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まん丸のコロッケ。
乗せられたパセリを、
ミントに見立てればスイーツに見えなくも無い可愛らしい外見。

上野さんから、
ソースは海老の殻から取ったソースで、アメリケーヌ・ソース、
コロッケのちょっと変化したもので、
海老とジャガイモを使っている…との解説。

“アメリカ風”と言う意味の「アメリケーヌ」、
これはソース文化が豊かなフランス料理なんだそうです。
海老の殻を炒める事で赤い色素を出したオレンジ色のソースを、
「ソース・アメリケーヌ」と言うのですね。

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中はこんな感じです。
コロッケ…と言うより、
クリームコロッケの様な…そんな見た目かな、と思います。
けれど、

「結構、じゃがいも感、強い!!」

…とは、一口食べての第一印象。
エビチリの様な甘味、酸味、辛味のあるアメリケーヌ、
このソースとじゃがいも感たっぷりのコロッケが組み合わさると、
とても、とても美味しいんです。
最高に相性が良い、何とも心惹かれる味わい!
香ホクホク芋ゴロゴロの日本の定番たる「コロッケ」と言う感じではなくて、
裏ごしされているでしょうか、
滑らかで、もったりとした…
ソース、ポタージュ、そうした食感も加わりながら、
香も味も、茹で立てのじゃが芋の良さをしっかり表現し、
心梳く香がとても濃く、充足感を与えてくれます。

じゃが芋だけだと、
とてもシンプルな味わいで、
芋らしい甘味と海老の甘味は、
共に淡白で穏やか、色味のない、地味滋養の味。
だからこそ、ウスターソースが合うんです。
お肉屋さんの、ほぼじゃが芋だけ、挽き肉は少し…でも旨い、
”お肉屋さんのコロッケ”級に、
しっかりじゃが芋らしい美味しさの主張があります。
可愛らしい見た目から感じない分、嬉しい驚き。
また、クリームコロッケでは、こんな味の濃さは体験できない訳で、
”良い所取り”の実現が、じゃが芋感の美味しさに直結している。
じゃが芋の美味しさを、
更に引き出しているのは、紛れもなくアメリケーヌソース。
派手な味です。躍るような旨さ。
じゃが芋だけの世界、真っ白なキャンバスに、
赤いソースの一文字が大きく描かれる様に、キャンバスの白も活かし、
また自身の赤、香味がとても華やいで感じられます。
コロッケの皮も秀逸。
とても薄く仕上げてあるので、
上品な構成が積み重ねられ、
アメリケーヌとじゃが芋が出会うのを邪魔しない、
油による融和が行われ、とても良い組み合わせで形作られています。

そして「岩清水・本醸造」を合わせる。
元々は少し甘味も感じられる印象がありました。
けれど、甘味に関して言えば、
じゃが芋にもアメリケーヌにもあります。
甘味、酸味、海老の香。
これを受けて、印象が変わり、締まった印象を感じました。
「辛口本醸造」の本領発揮と言う所でしょうか。
甘さを軸に、料理の強さに程好い距離感を保って「岩清水」が寄り添う…
…そんな印象でした。
どの甘味にも似た香を本醸造は持っていて、合わせ易い…とさえ。
的確な選択だと感じます。

最初は主役のじゃが芋にソースをつける感じで食べ、
そう、とてもじゃが芋の主張が美味しい訳ですよ。
蒸したじゃが芋の甘い香が、すごく活きる。
後半、ちょっと形が崩れてくると、ソースに浸る様になるのですが、
このソース優勢の状態も、また、たいへんに美味しいです。
有能な、人好きのする味なんですね。
食べて行く内には、揚げた皮部とソースだけをすくい取ってしまって、
そうして食べる事もありましたが、
それでも、塩気が強過ぎずに甘酸っぱくて、少し辛くて、程好いんです。
フランス料理のアメリケーヌ・ソースは、
生クリームでのばすもので、
どちらかと言うと海老クリームを美味しく食べるソース。
上野さんの言う「中華料理のエッセンス」、酸味と辛味…
これがとても良い方向にソースを進化させたんだと感じました。
だからこそ、お酒に酒宴に、肴に合う。

以前、鯛の揚げ物にエスニック系のスイートチリソースを掛けた、
「食酒楽会」がありました。
こちらも「集大成」を意識させてくれます。
あの時よりも濃厚にダシ感強くパワーアップさせた感じですね。

YOKOさんは「グラタンのよう」と思ったそうです。
なるほど、滑らかさもあり、また詰まった感覚は、
コロッケの中にグラタンがある様にも感じられるかも知れません。
自分は「海老、揚げ物」と言うキーワードでは、
和食の「真薯(しんじょ)」を思い浮かべます。
山芋を入れたりして、ふわふわに作りますが…
食感から、僕はどちらかと言うと「真薯」に近いイメージも持っていました。
食べやすい食感の良さ。
新感覚のコロッケでした。

【 鶏蒸物 】
「食酒楽会」がお勧めする、
合わせるお酒は、「岩清水・本醸造火入れの燗」とのこと。

【 中華の定番!棒々鶏を信州福味鶏と二種のソースで 】
コメント:棒々鶏と言えば胡麻ダレですが、もう一つは三幸軒アレンジの特製ソースでお楽しみ下さい。本醸造の辛口をお燗で。まろやかな胡麻と相性バツグンです。

上野さんからは、「棒々鶏」は中華の定番ですが、
今回は、そんな定番、オーソドックスなソースと合わせて、
カシューナッツのソースも用意しました。是非、食べ比べてみて下さい…とのこと。

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僕は写真を撮り、上野さんのコメントをメモして、
「さぁ行くぞ」と準備が出来た状態で食べ始める事が常。
早速箸を伸ばしたK村さんが、大喜びしている。
まさに「目を見張る」光景を見ました。
”文字通り”を目の当たり。
食べる事によって、とっても良〜ぃい笑顔になっていました。
カシューナッツ・ソースの棒々鶏をベタ誉めです。

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見た目にはあまり差がないけれど、
オーソドックスな胡麻のソースには黒い粒が見え、ちょっと濃い色。
カシューナッツソースは、
煎った色キツネ色、黄土色の、比べて明るい色合い。

「うん!うん!」

…と頷くY本さん、YOKOさんも続きます。
自分もパク付くと…

…朝、淹れたてのコーヒーのたまらない、かぐわしい匂い。
あの心地好さを、そのまま豆の甘く香ばしい香に切り替えて、
快感そのまま…
ピーナッツ、味噌豆、田楽、焼いた味噌の湯気立つたまらない…
甘い芳しさが、実に深く濃く表されていて、物凄く旨い。
豊かです。ふくよかです。
余韻が、とてもとても長く続いて止めど無く、
舌先に甘味、塩気、鼻っ面に返って香、良い時間を与えてくれます。

「こんなに美味しいのは凄い…」

…好奇心で、ソースだけを口に入れてみると、
先程はベストバランスだと思えた味わいが、
どこか塩辛く、ナッツ、味噌の風味にしても、
強過ぎて感じられるくらい。
そうか、なるほど…仕立てた鶏肉の塩気や味に、
全て合わせて調えてあるんだと実感します。

この特別なソースに相対して、
オーソドックスなソースってどうだろう?

…そう思わないでは居られずに、箸を伸ばす。

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「オーソドックス」、「定番」と呼ばれる、
人類なら好きであろう風合、
歴史の積み重ねによって形作られた象徴、
メモの最初には、こう書いてあります。

「 普通にすごいウマイ! 」

普通だか、凄いのか、訳が分からない。

定番の味、胡麻の風味があって、確かに知っている味。
けれど、知っているどれより美味しく感じました。
絶妙な甘辛さがあって、強く感じる胡麻の風味の甘味に対して、
美味しくピリッと辛さが光って、すごく美味しいのです。
汎用化されてしまっている「ゴマだれ」なるタレも、
合わせる料理人の力、狙いによってここまで引き上げられるのか、
…カシューナッツソースが特別だからこそ、
とても尊く、最上級の定番の味に感動しました。

世の「棒棒鶏」のイメージって、
瑞々しい胡瓜と和えてある、一緒に食べる印象があります。
すると、増えて来るのは、きっと油なんだろうな…と感じます。
油を増やすとマイルドに感じるし、
胡瓜の味も足さなくちゃいけないから、塩と辛味を足す事になり、
鶏本来の美味しさを感じながら、
タレとの組み合わせを感じながら…と言う本来の楽しみから、
もう少しサラダっぽい、日常生活っぽい味の組み立てになると思うんです。

目の前の一皿、
この鶏とタレを基軸に、2種類のタレを食べ比べる。
そうそう、
メニュウも「前菜」でなくて「鶏蒸物」ですもの。
きっとコンセプトが違う。
僕らが日常で出会うものより、ずっと合わせる狙いがハッキリしていて、
絶妙な味付けが為されていて…うん、実に旨い!

とにもかくにも、タレ…が美味しいのは確かだけれど、
それ以上に、根幹である鶏肉の美味しさを感じます。

しっかりと存在感のある美味しさ。
鶏肉の火加減、加熱して残る水分量、完成の食感。
「誤魔化しの利かない料理」だと思います。
見ての通り、こんなにシンプル。
鶏肉から、タレとは異なる塩味を感じます。
鶏肉の香も気付くと高いんです。
良い旨味があるけれど、
元来持っている脂に頼った感じでなく、
適度な締まり、弾力、噛んでいて、肝の所で塩。
タレが無いと、食べられるけれど、美味しいけれど、
ほんの少し物足りないくらいの塩気。
味気は鶏肉から出ていて感じるけれど、1枚2枚は食べても、
その先は…と言う心持ち。
タレが加わる事によって、グンッと豊かな味わいになり、
何枚でも食べられる味わいになります。
タレと鶏肉の絶妙なバランスって、こう言う事を言う…
お手本たる素晴らしい一品だと感じました。
きっと細心の加熱加減温度感覚…
料理人の勘と技術が必要なんだと感心させられる料理でした。

そう言えば、K村さんから、
中野市にあった蔵元「玉泉」のお話をちょっと伺いました。
どこかで見た事がある…と思いましたが、
過去の写真を漁ってみると、
2006年の写真に、その姿を確認することが出来ました。

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信州中野駅にある「中野市物産陳列所」のショーケースの中に、
「岩清水」「勢正宗」「志賀泉」「天領誉」と並んで、
いちばん左、「玉泉」のボトルがあります。
北信には、
「富士横綱・カルカヤ正宗」と言う銘柄もあったかと記憶しておりますが、
現在の長野酒メッセにおいても見掛けませんね。

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その当時、2006年と言う年は、
「新生・岩清水を呑む会」の為、中野市に来ていました。

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「杜氏:小古井宗一」と刻まれた記念すべきボトルです。

…おっと、本編に戻りますね!

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続いて、コンロ設置。

これだけで気分が昂まります。

【 鍋 】
「食酒楽会」がお勧めする、
合わせるお酒は、「中野土びな・特別純米」とのこと。

【 秋鮭とキノコの雪山仕立て 熱々翡翠あんかけ 】
コメント:食酒楽会の鍋はいつもサプライズ!脂の乗った秋鮭とキノコたっぷりの熱々鍋仕立てです。ジューッと熱いのでお気を付け下さい。旨口の特別純米がお料理のコクを増してくれます。

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「 スゴイ鍋がやって来た! 」

…と、一同驚かずにはいられません!
まさに、サプライズ!
第18回の鍋料理、
「白菜と豚肉の四川煮込み ジュージュー鍋仕立て」においても、
素敵な驚きと、
初体験の香味に興奮した記憶はまだ熱い中、
今回も、見た事がないお料理が、鍋物がやって来ました!

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料理人・上野さんの手には緑色のスープ。
「熱々翡翠あんかけ」と言うタイトルに違わぬ、
とても鮮やかな色のスープに見えます。

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カセットコンロ、スイッチオン!
フツフツと行くか、行かないか…
熱が伝わり出した頃合で、「よし!」と言う声。

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翡翠色の餡を入れます!
「ジュー」…と、早くも腹に染み入る旨そうな音。

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餡を最後まで入れて、もう少しだけ熱します。

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完成!
それは仕上がりの歓声と共に!

もう、この段階では火を止めてしまいます。
火の掛け過ぎは、素晴らしい香も飛ばしてしまうため。
熱して、香を出して、旨味と合わせて、火は止める。
第18回の鍋でも、そうした手法で、
会場からは「えっ、もう火を止めちゃうの?」と言う声が上がりますが…
食べて、皆さん納得する旨さ、感動の風味があるんです。
この繊細さを兼ね備えたメニュウを、
こうして大人数で食べて良い状態で提供してもらえる…
これは、とても嬉しい事だと思います。
とても良く出来た料理だと思いますし、
あぁ!目で、耳で、鼻で感じた当日のこと、
美味しさを思い出すと、今でも垂涎!

まず食べてみて…
「さっぱりしている!」…と感じました。
香がとても青々しく、塩の風味が豊かに立つ…
…でも、心地はさっぱり。
透き通る印象を抱きます。旨さに透明感がある。
常に、青い香、風が、五感を刺激し続けてくれます。

その流れの中に、鮭。
鮭はふっくらとした食感に仕上げられていて、
”味付け”、足す味わいは翡翠色のソースによってのみ。
鮭の美味しさ、鮭が持つ味、
鮭の素材の持ち味。鮭の鮭らしい美味しさ…
ただただ、鮭の味が色濃く前面に出て来ています。

翡翠スープには、
緑色の葉の様なものがたっぷり入っていて、
品の良い、鼻へ抜けて行く香の良い、美味しい塩味のスープ。
とても”新鮮な”印象を抱くスープで、
淡色の構成に見える中で、
淡さ、スープの全体と、
濃さに通じる塩の活き方、濃淡のバランスが絶妙に感じました。

鮭にも塩味がある、鮭にも脂がある。
翡翠スープにも味があり、ダシがあり、風味が生きている。
どれも、きっと単独で食べると「薄い、足りない」と感じるかも知れない度合い。
しかも、食べるのは清く正しい酔っ払いの面々。
この、優しさにも通じる淡い味わい、
さっぱりさ、爽快さを感じられる度合いと言うのは、
今日の「集大成」と言う言葉を活かすものだと思いました。
コース料理の中の、このタイミングでの「鍋」と言う、
メインディッシュ級の重みあるメニュウを、
美味しく食べさせる度量は、日々の経験も生きている…
更に、20回の食酒楽会の料理構成から経験して、
作り上げられたものだと感じました。

この…物足りなくない、
あっさりした構成って、実現出来るんだな…って思ったんです。
世の中の「あっさり塩味」って、
たいてい油が多かったり、塩が強かったり、合わせてダシが強過ぎたり…、
正真正銘の「あっさりさ」って、こうした味わいを言うのだと思いました。

青々い風味の良さは、
「青菜炒めの真髄のひとつの解」と感じました。
青菜の茹でたての様な香がスープに封じ込められていて、
メモを取りながら…ここまでメモを取っていて、
ようやく「あっ、大葉なんだ!」と遅れて気付いたくらいで、
大葉として出会って来た香、出会う香と言うものは、
鮮烈でちょっとだけ苦い感覚ですが、これとは異なり、
このスープには、柔らかな鮮烈さと、
中華料理の「清湯」の美味しさ、匂いの良さが詰まっていて、
何か素敵なフレッシュ・ハーブの組み合わせの結果だと信じて疑っていませんでした。
キノコ類、しめじもまたスープに反応して、たいへんに美味しい。

これに合わせて「中野土びな」は、
甘味が伸び、良い飲み心地です。
せっかく、優しさの風合が良い鍋料理です。
その余韻に寄り添う様な印象。
YOKOさんは、前回に続いて、
この「中野土びな」が好みだと言っていました。
「純米五割麹」と並んで、覚えが良い様です。

しみじみ…食べ進めて、より一層、思い直すのは、
翡翠スープの熱さがある、
加熱されたものでありながら、
大葉の味わいが、とても上品に出ていながら、
香が残っている…と言うこと。
ちょっとした温かなものに入れるだけで、
噛んでこそ味は出ますが、
香って、どうしても消えて行くものだと思うんです。
とても繊細な調理、技術を感じました。
YOKOさんに感想を聞いてみると、
「感動がある料理だと思う。
   さっぱりだけど塩味もちゃんとしていて良かった。
   白い山が融けていって、
   平たくなって行く様を見ても楽しかった。
   大葉と塩味がベストマッチ」…とのことです。

うん、美味しかったなぁ!

【 豚炒 】
「食酒楽会」がお勧めする、
合わせるお酒は、「岩清水・本醸造生原酒”伍醇”・5年熟成」とのこと。

【 スペアリブの黒豆炒め ブラムリーソース 五香粉の香り 】
コメント:お箸でも切れるお肉に仕上げました。小布施産リンゴ「ブラムリー」を使用した甘酸っぱいソースがお肉にマッチします。香り高い五香粉はお好みでどうぞ。贅沢に本醸造の生原酒をご用意致しました。

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しっかりした旨味、あっさり感じる脂!
豚豚しい匂い、味がたまらない!
ダシに本来は言うべき言葉かも知れないけれど、
「よく味が出ている」…と感じます。
良い!美味しい!
煮込んだ様な柔らかさ、味のまろやかさ、
オーブンなどで焼いた様な全体に広がる匂いの香ばしさ、
「炒め」と集約されているけれど、
それ以上に手間の掛かった雰囲気があります。

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「お好みで」…と言って添えられた五香粉。
僕もYOKOさんも、初めて口にするものでした。

やっぱり気になる…
そのままで、どんな香味か気になるので、ペロッと味見。

こう…まず頭の中に浮かんだ言葉は「太田胃散」ですね。
「太田胃散」の香味と共に、スパイスの味わいを…
カレーに入れたら、奥行きを作る様な雰囲気があります。
これをスペアリブに掛けたら、どうなるのか。

「  わわっ!  」

先んじた、スペアリブそのままの味、
五香粉だけの味わいと全く異なる…くらい、
「変身」を感じるくらい、グッと肉の味が変化して感じます。
特徴的過ぎて、好き嫌いがあると言う五香粉、
僕もYOKOさんも、五香粉があってこそ「完成」を感じます。
五香粉があった方が好み!
五香粉が引き出す味は、豚肉の豚らしい味わいだけでなく、
タレの、ソースの香、甘味、コク…
自身のスパイス感もありながら、全体の味わいを持ち上げてくれる。

肉の柔らかさは特筆もので、綺麗な繊維質を食べながら見る…
口の中で感じることが出来ます。
後々、聞いてみると、1度茹でてから焼いている…とのこと。
「スペアリブ」と言う食材、
骨の周囲が肉でも魚でもいちばん美味しいと知っていても、
食べにくさが勝ってしまって、あまり好みません。
選ばないし、食べたりしないのですが、
そうした思いに希望を与えてもらった心持ちです。
きちんと料理された味わい、だからこその食感。

合わせた日本酒は、こちら。

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「  伍醇だー!  」

…と歓喜の自分。このボトルは、とっても記憶に新しい!
「三幸軒」だけで飲む事が出来るボトル。
題字も料理人・上野さん直筆のお酒なのです。
栗の様な香、深い味わいはこってりとして、重みがあり、
その重さが、何とも素敵な重力、しっかりした酸に支えられ、
旨口、味の膨らみを心地好く味わう事が出来ます。

僕はこれを飲みたくて、機会をいつも狙っていて、
もうひとつの目的、
「普段飲みで、三幸軒に行きたい」を同時に叶えた昨年。

【  中野市酒蔵今昔展と夜に三幸軒(2012年11月11日〜12日) 】
(  http://sake-soja.cocolog-nifty.com/blog/2012/12/2012111112-136d.html  )

「この時と、またちょっと味わいが違いますね〜!」

…と上野さんに伝えると、
その時のことを覚えてくれていて、
(1年も前の、たった一晩の出来事なのに…有難い事です)
「あの時は、特別純米だったんですよね」…と教えてくれます。
なるほど、
「伍醇」ラベルの嬉しさに全く気付かなかったのだけれど、
今回は「本醸造」と銘打ってあるじゃないですか。
「熟成」の可能性は、小古井さんから何年も前の段階で伺っていました。

「うちの酒は、熟成させても美味しいと思うんです」

この「伍醇」に、その時の表情が浮かびます。
とても良い深味、ここにだけある美味しさ。
醸造年度18年に醸造されたお酒です。
これからの造りが25年ですから、
氷温下にて長い年月眠って来たお酒は、
花開きながら、時間が経つ度に、また味わいを変え、
ボトル1本、飲み干すまでに、
色んな感情を、美味しさを与えてくれるものでした。

本当に、数字では日本酒の美味しさは推し量り切れない。
日本酒度+7、酸度2.0、
この数字で味わうお酒のどれよりも神秘的と感じる程、
数字を意識し過ぎて飲むことなんてなくて、
美味しさを素直に味わう事の大切さも教えてくれる心持ちです。

酒にも旨味があり、
スペアリブの肉の旨味、ブラムリーソースの旨味、
それぞれの旨味に調和がありました。

この頃、
僕は到着した小古井さんとの話に夢中になるあまり、
YOKOさんに背を向け続けていたのですが、
YOKOさんは、K村さんを加えた、
Y本さん、M入のおいちゃん…お馴染みの面々と、
マラソン話で盛り上がっていたそうです。
皆さん、ランナーさんで、走ること、
またマラソン大会だったり…楽しそうに過ごしていました。

「良い空間だなぁ」

…そう思います。良酒良縁。
笑顔が多い。
「食酒楽会」のお三方が作って来たもの、
目に見えるものもあるでしょう、
けれど、こうした人と人との縁、楽しさ、
目に見えない、掛け替えなのないものがあると感じさせられます。

M入のおいちゃん、
長野マラソンや小布施”見に”マラソン大会にも参加するほど力がある方ですが、
マラソンを始めたきっかけが奥さんであるんだそうです。
奥さんがマラソンを始めたい…
けれど、夜道は危ない、一緒に走るか…と言う出発点。
今ではご夫婦でマラソン大会に出ていらっしゃるんだそうで。
ジーンズを履いて、
それが似合う、スマートで筋肉質、アスリート体型。

自分も今、ちょっとずつ走り始めています。
どこまで行くことが出来るか分かりませんが…
YOKOさんも諏訪湖マラソン、長野マラソンを目指してみたいそうですし、
健康増進、体力維持、
これからも美味しく日本酒を…
まずは小古井さんの日本酒と、
上野さんの料理を楽しんで生きていたいですから、
頑張って行きたいと思います。

【 〆 】
【 五目焼きそば・弐 】

コメント:三幸軒で人気の五目焼きそばを特別にアレンジしました。出てからのお楽しみです。

初めて…食酒楽会でなく、
三幸軒を訪れて食べたのは、小古井さんと一緒に食べに来ていて、
「これが好きなんですよ〜」と言って、
五目焼きそばの大盛りと焼き餃子をセットでお願いして…
そして、油淋鶏も食べて、お腹いっぱいで幸せな気分で。

その時もそう思ったし、
三幸軒のブログに掲載される月毎の限定メニュウを食べに、
また温泉目当てに北信に出掛けた時も、
何度か食べに来ている中で、「三幸軒」の看板メニュウって、
「五目焼きそば」だと思っています。
注文も多いと思うんです。よく聞く感じ。

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何が旨いって、まずは焼いた麺の香が良く、
餡も優しい味付けでね、
ここに酢ガラシがピンと決まって、
酸味と辛味がアクセントになって、
今日食べたら、明日も食べたくなる味。
地元でこれを食べて育ったら思い出の味になる…
そんな味わいなんです。
僕は限定メニュウ目当てで、都度違うメニュウを頼むことが多いけれど、
YOKOさんは、限定の味見は僕のもので出来るからか、
「五目焼きそば」、注文する事が多いですね。

そんな「五目焼きそば」のアレンジ。
「弐」の取り組みに、料理人・上野さんの意気込みを感じました。

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スープ付き!…と一見思ったのですが、さにあらず!
こうします!

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後入れの餡掛け!
しかも、餡はフカヒレも入った餡なのです!
食酒楽会の数日前、
「着々と準備が始まっている」…と言う内容の更新が、
三幸軒ブログに掲載されていましたが、
なるほど、フカヒレを戻すからこそ…だったんだと知ります。

「  麺のイキイキさがいつもと違う!  」

そう感じます。
とても麺が美味しい。
プリッとパツッと、ハッキリした食感。
すごくすごく印象的な麺の美味しさがあります。

麺の香は…焼いた香は、
いつもの「五目焼きそば」と同じ香だと思います。
餡も、フカヒレが入っているとは言え、
いつもの三幸軒の味だと思うんです。
でも、麺の印象は違う。とても記憶に残る美味しさ。
殊更、主張して感じられる麺の存在、
普段の餡と合わさって、少し柔らかい麺も美味しいんです。
酢ガラシと絡み合わせて、ベストバランスの…
…酢ガラシ、掛けてない今、物足りなさもなく、美味しい…!
麺の美味しさに持ち上げられ、
ベースの三幸軒の味に進化を感じられる構成。
普段通りの味もたっぷり感じる中で、全くの新味を作り上げた!
…そう感じました。

「どう?YOKOさん?」

…と聞くと、それはそれは満面の笑みで、

「うまい!」

…と一言。

麺の水分量が的確…なのかなー…と考えます。
餡が後から加わる分、麺が水分を吸わないんだと思うんです。
先日、久し振りに家で焼きそばを食べました。
マルちゃんのいつもの焼きそば3食パックを買って、
まず2食をまとめて使いましたが、
野菜と加えた水分が多かったみたいで、
しんなりし過ぎてしまって、柔らか過ぎて、
あんまり美味しくなかった。
後日、残る1食を「じゃあ、水分を減らしてよく焼こう」と思ったら、
今度は焼き過ぎたみたいで、
乾いてくっついてしまい、モソモソの食感。
どうにも美味しくならなかったんです。

焼きそばは、焼きそばですから、
当然の事なのだけれど、麺が主役です。
麺を美味しく食べることが出来てこそ、意義があると思います。

まさに、
「五目焼きそば・弐」は、その意義を欲しいままにしていました。
際立つ麺の美味しさ!
素晴らしい〆の食事となりました!



【 御礼 】
今回もご参加を頂き、誠にありがとうございました。
手さぐりで始めた食酒楽会も、足掛け6年目、
20回を迎える事が出来ました。
これもひとえにご参加頂く皆様のおかげと、主催者一同心中より御礼申し上げます。
更に精進を努め、期待を裏切らない会にして参りたいと存じます。
今後とも変わらぬご支援を賜りますよう、謹んでお願いを申し上げます。

本日はどうもありがとうございました。
次回もお越しを心からお待ちしております。
(パンフレットより)

Dscn3407

京都から帰るバスを、そのまま三幸軒の前に停めて、
小古井さんが中野市に無事に戻り、
座に加わって、そして宴もたけなわ、挨拶の時間と相成ります。

Dscn3412

井賀屋酒造場、小古井宗一杜氏より、挨拶です。

「食酒楽会」は、この3人でやって来ました

酒造りは、手伝いから始めました。
蔵に帰って来て10年になります。
設備も揃ったと思います。
ここまでが、ある意味でひと区切り。
またこれから、新しい…次を目指して行く事になります。
4月には新酒が仕上がります。
これは10年間の集大成となるものです。
少しでも笑顔になってもらえたら…と思います。

また、新酒が出来て、この席で…
三幸軒で、僕は小古井さんの新酒に出会いに来るんだ、
中野市に戻って来るんだ!
…そう、強く思いながら聞いていました。

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さて、ここでひとりのおじさまの発声で、
ほとんど皆勤賞のおじさまが紹介されます。
そのおじさまから、
「今日は素晴らしい会をありがとうございました」
…と謝辞があり…。

北信に伝わる「御天領締め」の本寸法の流れでした。
これまで「ションション」と締める方法は体験させてもらいました。
こうして紹介しながら締めて行く作法もあると読んだ事がありましたが、
なるほど、こうして進んで行くのだと目の当たりにします。
皆さん、胡座になります。
胡座が御天領締めの正式スタイル。
僕もYOKOさんも、もうバッチリ覚えております。

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「  ションションション  」

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「  ションションション  」

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「  ショーン、ション  」

そして、代々「食酒楽会」の締めとして続けて来た吉例、
「一本締め」も行って、
大いに盛り上がった第20回、記念の「食酒楽会」がお開きとなりました。

ご馳走様でした!



中信に住む僕らにとって、
こうして中野市に泊まる…「食酒楽会」に参加する事は、
大本命のお楽しみですが、温泉もまた、
今となっては忘れてはならない楽しみでもあります。
かの有名な山田温泉、七味温泉を翌日、僕らは目指しました。

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新七味温泉・山王荘

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奥山田温泉五色上源泉・レッドウッドイン

共に硫黄系の良泉。
あまりに気に入ってしまい、
YOKOさんから翌週もリクエストがあり、
山田温泉元湯わなば源泉・大湯、
新七味温泉・紅葉館にも行きました。
特に七味温泉の源泉は高温ですが、
そのまま掛け流し…ホースで各自、水を入れて薄める事が出来る…
…と言うか推奨されています。
この地域だからこそ。白濁エメラルドグリーンのお湯は、
入る価値を、
高山村、奥山田温泉まで足を運ばせる力があるお湯だと思いましたし、
高山村に向かう道途中、
小布施温泉の「穴観音」と「あけび」があります。
こちらも緑色、火薬の様な硫黄の匂いが印象的な温泉。
遠く、高く、万座温泉から下流に流れて小布施まで。
自然、水脈の気配を感じないではいられませんでした。

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レッドウッドインの玄関から振り返ると雪景色。
奥山田温泉地域と志賀高原を繋ぐ道路は、
もう冬季閉鎖期間に入っていました。

冬が始まる。

酒造期に入る。

そんな季節は、もうすぐそこにあるのだと感じました。

さて、充実した夜、
記念すべき第20回「食酒楽会」でのお楽しみを申し上げて参りました。
もうちょっとだけ続きますが、
どうぞ最後までお付き合い下さい。

長講一席、読んで頂きまして、
誠にありがとうございました!

ありがとうございました!

ありがとうございました!


会がお開きになったあと。

「  20回、6年続けるって、とっても凄いことだと思う  」

…と、僕が言うと、
善光寺屋の旦那は、こう言った。

「  いやいや、宗くん、上野くん…ふたりの力が大きいんですよ  」

すると、小古井さんと上野さんは、
全く同時に、文字通り口を揃えて、こう言う。

「  善光寺屋さん、あっての…だから、続けて来れたんです  」

互いの尊敬。
三位一体たる姿、空気感。

これ、たった10秒ない、瞬間の出来事なのだけれど、
でも、とても響いた。
僕の心には、よく染みた。

すると善光寺屋の旦那が言う。

「  ふたりの進化が凄すぎて、ついて行くのがやっと  」

うん、その進化がとっても楽しみで、
楽しみなだけでなく、
美味しいから、僕らはまた、食酒楽会に来たいと思うんだ。


「広報なかの」
中野市市役所にて電子版があります。
http://www.city.nakano.nagano.jp/public_an/index.htm
11月号「信州中野の酒」と言う特集で、
「岩清水」の掲載もあり、
また、小古井さん、上野さんが座談会に参加されております。
バックナンバーからどうぞ。

食酒楽会ブログ
( http://blogs.yahoo.co.jp/shokusyu1 )

三幸軒ブログ
( http://sankouken.blog.fc2.com/ )



後日談として。



11月29日、
井賀屋酒造場、初蒸しの場に、
立ち会わせて頂く事が出来ました。

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とても懸命に、真剣に…「一滴入魂」の心意気、
肌で感じて来ました。
今年も美味しい「岩清水」が仕上がりますよ!
確信です!!







最後に、ちょっとだけ昔話を。

2005年。
僕は、たまたま仕事関係の出張で浜松町に出掛けていました。
「名酒センター」にて、出会いがありました。
その時の文章を、掲載します。
食酒楽会後にも話があったけれど、
本当に、よくあの場所で出会う事が出来た…と思います。
自分の職業上、初期の知識的研修であって、
それ以降、資格試験があったから1年に1回の出張はあったけれど、
資格取得後は…ここ2年くらい、
出張なんてしていないんですから。
会えたから、始まった。

とても掛け替えなのない、ご縁の降り立った日の記憶。
嬉しくて書いた、その頃の自分。


50円で、“濡れせんべい”を買って、
えぐるように摘みながら、酒を飲む。
その50円はペットボトルで出来た賽銭箱に放り込む。
そう言う風情も気に入った。
目にした光景も気に入るものばかりだった。
背中には、どれでも飲んで良い、器に注がれる、
僕に飲んでもらうのを待っている日本酒を背負っている。

「今日は1杯だけだよ」と、
きっと、
日本酒のことなんて全く分からないおじさんが、
小銭をポケットから出し、
酒のアテもないまま1杯引っ掛けて帰って行く。
「これからどこ行くのよ」なんておばちゃんが返す。
「あはは」と笑いながらおじさんは外、人の流れに消えて行く。
きっと顔見知りではないおじさん達が、
「こうして立って飲むのも良いもんですな」と
一言二言交わし、また1人2人、入って来ては帰って行く。

ともあれ、
退社直後のお父様方の景気付けの時間帯を過ぎて、
少し間が空いた時、岩清水のお兄さんが店内に入って来た。

そこで色んな話しを聞く事ができた訳だ。
学ぶ所も多々あった。
その中から、
「来年の岩清水について」を、今日は書こうと思います。

「岩清水」のお兄さんは、
20歳の頃から蔵に入り、
努力実って、
今年、17BYの造りから「杜氏」として活躍できるのだそうです。

「杜氏」と言えば、
各蔵に属する酒造集団の長のこと。
酒造りを取り仕切る代表者、責任者です。
ともすれば、
自ずと自分が望む酒を作ることが出来るので、
その希望、輝かしいものでした。

(物の本には、本質的に杜氏と言うものは雇われるもので、
 雇い主の意向に沿う酒を作ってこそ…とあったりもします。
 現在は、雇い主…だから専務、取締役を、
 杜氏が兼任したり、家族が就任したり…と、形態も様々になり、
 そうした“杜氏の立ち位置”が変わって来ているのも事実だそうです。
 「岩清水」のお兄さんも、
 肩書きは杜氏であり、若専務であります)

「特徴のある酒でいたい」

「ここは新しい酒を造ると謳われたい」

「長野の人、水、米、風土を活かして酒造りをしたい」と

岩清水のお兄さんは仰っておりました。
この4大要素を活かして酒造りをしたいと。
そうして長野の酒、
主流である「淡麗辛口」の酒を造るのも良いだろう。
しかし、
それでは個性がない、顔が前に出ない。
皆の心に留まっていかない。

「長野の人」とは、「飯山杜氏」の自分自身。

「長野の水」は、
超軟水の水…この契約をようやく取り付けたばかり。
来期からの造りにはどうしても必要なのだそうだ。

「長野の米」は、
長野県産、長野から生まれた酒造好適米である
「美山錦」、
「新美山錦(ひとごこち)」、
「しらかば錦」、
「金紋錦」…これを使っての酒造り。

「長野の風土」とは、
蔵元のある信州中野はとても寒い地域。
松本市に住んでいる自分からは
異世界に思えるほどの豪雪地帯です。
小学校の頃なんか、
「社会」の時間、
「北信の冬の風景」と言う写真を見て、
文言は「長野県内」となっているけれど、
「そんな馬鹿な、大袈裟な」と思った覚えがあります。
そんな地域。
冬は電車も止まるそうです。

発酵の途中で加水をし、アルコール度を調整。
アミノ酸等を殺さずに生かして生かして、
元気な醪のまま、40日以上に渡り発酵させて、
米をとにかくしっかりと融かす。
米が融けて行く過程でも、アミノ酸度を不必要に上げない。
米を融かすからこその旨味がある酒、
アミノ酸度を上げないからこその、綺麗な酒。
そうした酒を造りたいとの事です。
その条件として、必要になって来るのが信州中野の風土。
寒い地域だからこそ、
アミノ酸度の上昇を抑える事が出来ると言うのです。
「信州中野」であること、
蔵のある場所を活かし、
蔵のある場所だからこそ出来る酒を醸し、
「これがこの蔵の酒です」と胸を張って、
オンリーワンの個性を持って世に出したい。
世に出て行く酒が、来期の「岩清水」の展望だそうです。

また、せっかくのお酒、炭濾過などはせず、
「全て“無濾過”で出したい」と仰っていました。

以上の4大要素を踏襲して醸すお酒。
「しっかりと旨口であるが、美しさ、綺麗さもある」
それはつまり「淡麗旨口」の酒ということ。
これを目指していきたいそうです。

すごくすごく熱心に教えて頂きました。
時間、あっと言う間に過ぎていって、
お酒のアテが濡れ煎餅だけだったこともあって、
酔いもわりと進みながらも、
立ちっ通し、真剣に利き、話をし、物凄く充実していました。

あぁ、夢が見える。

「 淡麗旨口の夢 」

…だ、と。

販売は来年春。
蔵に直接買いに行くか、
限られた流通店のみの販売にするとの事。
まだまだ色々と教えて頂く事が出来そうなので、
蔵に直接買いに行こうと思います。


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帰り際、「名酒センター」の外観写真を取りました。
小さく「岩清水」のお兄さんが写っています。
本当に感謝して、僕は長野への電車に乗りました。

その頃、
外はもう暗くなっていた。
夏、ですから。
お店に入った頃、まだ外は明るかったんです。
熱中していたから、
外が暗くなることにも気付かずに、夢を植えてもらった。


その頃から、
今もずっと、ずーっと夢を僕は見続けているんです。
夢を追い掛ける背中を、見ているんです。

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