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2012年1月8日 - 2012年1月14日

2012年1月 9日 (月)

旅第13回・信州SAKEカントリーツーリズム(2010年12月11日・佐久,東御)



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誘惑箇所の多い中、
取り分けて、いっぱいのお運び様、
誠にありがとうございます。
気楽な所で、一生懸命に書いて行く事にしております。
どうぞ、お付き合いの程を願っておきまして…。

当節、長野県と申しますと、
農業国、山川草木、全てがお揃いになる、
自然豊かな、緑溢れる土地柄…
標高も高く、山々に囲まれ、
山と山の間の盆地、ちっぽけな土地に、
所狭しと人が暮らしているものでございます。
ですから、長野県の主役と言うのは、
実は人間ではなく、自然なんだと…
…今、私が考えて適当に申しておりますんで、
あまり当てになった話じゃありませんが。

自然が豊か…と言う事は、
取り分けて自然から得る恵みも多く、
また自然との共存を目指し、闘争もまた然り。
自然から学ぶものは実に多く、故に知恵の深い県民性です。
全国的にも読書も致しますし、勉強もする。
…けれど、テストの順位は不思議と下から数えた方が早い…
…なんてんで、
自然とよく遊んでいるんだと思っておきますが。

こと「酒」と申しますものは、
自然が育むものでございます。自然あっての酒でございますな。
日本酒は、山からの伏流水、
その年、刈り取ったばかりの米、
米に麹菌を撒いて作る米麹の3つの要素からなります。
ワインは葡萄ですな。これはご案内の通り。
葡萄には日本酒で言う麹や酵母の役割を担うものが、
ハナからございましてな、
曰く“果汁が実から出る事によってアルコール発酵して行く”んだそうです。
焼酎は芋もあれば、蕎麦もある、
出来た酒を蒸留すれば焼酎だってんですから、
各酒蔵が焼酎も一緒に売っておりますな。
特に酒粕からアルコールを抽出するものを粕取り焼酎なんて言ったりします。
どちらかで、お耳に入った事もおありかと存じます。

えー、さて。
信州SAKEカントリーツーリズムにおきましては、
日本酒を醸造している酒蔵…
これは県内の全ての蔵元さまではなく、
おおよそ、ほとんどの蔵元さまの参加と相成っております。
参加蔵は76蔵でございますが、
蔵元さまの数となれば、そんな訳ですんで、もう少々増えますな。
ワインやクラフトビール、ウイスキーの蒸留所なども含め、
全ての酒にまつわる施設を足せば、
酒蔵大国、隣国「新潟県」にも勝るものだと伺った事がございます。
重ねて申し上げますれば、
長野県とは自然豊かな国でございますので、
酒産国として、様々な取り組みが日々、
実は身近な場所で多く繰り広げられていると言う事なのでございます。

今回の旅では、
新たな命、新たな雫を産み落とす場所にも立ち寄りました。
東御市「ワイン特区」、
誕生した新しいワイナリーも見学して参りました。

より一層、信州信濃を知って行く旅、
信州SAKEカントリーツーリズム、
旅の第13番目の一席でございます。
お支度、調いまして、
おあとがよろしいようで。



【 2010年11月9日 】

そろそろ冬の足音が聞こえ始めるころ。
天井が高くなった様に感じるのが、この時期の空の景色。
よく晴れて、心地の良いドライブ日和。
そう思いはしたのだけれど、

「遠い!」

…と言う様にも思った記憶がある。

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もちろん、松本から言えば…だし、
南信の飯田や伊那あたりから言えば、それどころの騒ぎじゃあない。
信州って、やっぱり広いんだなぁ…と思う。
だからこそ、いろんな風土に出会えて面白いんだ…と、今もなお思う。

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高速道路を降りて、一路、佐久穂町を目指す。
降りてからの時間も容易い訳ではなくて、
きっとそれこそが「遠い」と思った理由なんだろうって思う。
佐久平は旅第4回でも訪れているし、
数年前に「佐久乃花」の蔵見学にも訪れた都合、
少しずつ見覚えのある風景を感じる。

佐久穂町から南下し、小海町、南牧村を越えれば、
山梨県、清里の地に辿り着く。
東信地区の中でも南に位置する町へ向かう。

1台分の車しか通れない、
行き交う場合は待つべきである道を越えて、
黒澤酒造を目指しているのだけれど、
風景こそ、建物こそ違うけれど、
どこか山清酒造の筑北の景色を思い出していた。
どことなく似ている気がして…
それに山清も、たぶん黒澤酒造も、
共に地元の名士と言った風情の残る蔵元さま。

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看板を頼りに、とりあえず車を停める。
杉玉には青いものもあり、新酒の報を伝えている様だ。

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僕らが車を停めたのは黒澤酒造の事務所前である様子。
「井筒長」と大きく酒銘が掲げられている。

近年「井筒長」と言う古くから受け継がれる銘柄のほか、
生もと造りなどに取り組み、
「○」に「ト」と書かれた「マルト・生もと純米」が、
海外で好評だったり、
「9630」と書いて「クロサワ」と読ませるもの…
「黒澤酒造」の「黒澤」と言うお酒も見受けられる様になりました。
より個性的なブランドに感じられます。

そんな認識がありましたが、
蔵元HP記載の商標転遷を拝見致しますと、
明治時代は「マルト正宗」、大正になり「井筒正宗」、
昭和になってから“井戸の守り手の長”の意味で「井筒長」とのこと。

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ひとつ前の写真、
YOKOさんの背に広がる佐久穂の風景。
山の雰囲気は、
また少し松本で見ている山とは表情が違います。
この右手、坂を下りて行った先に、
「井筒長」のお酒を買い求める事が出来る、
「ギャラリーくろさわ」があるのだけれど、
僕とYOKOさんは「資料館」なる文字に目を留めます。

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平成2年に開館したと言う「酒の資料館」入り口。
荷物の出し入れもあるのか、
軽トラが先に入っていますが、
その脇をすり抜けて、中へ。

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立派な庭が広がります。
こうして門構えを通り、誂えられた庭がお目見えする建築は、
やはり筑北の「山清」でも拝見した様式であり、
旧家、名家の雰囲気、時代を漂わせます。

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入り口には仕込みに使っていたのでしょう、
大きな木樽が転ばされておりました。

Cimg2862

古民具などが展示された資料館。

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古い時代の醸造機具の展示もありますが、
中にはこうした現代デザインとは異なる、
時代を感じさせる印刷物、広告などもあり、
たいへん興味深く見学させて頂きました。
今に至り「今日の一筆・修行中」でも、
ラベルのデザインを真似させて頂く際には、
普通酒、佳撰酒などのレトロラベルを選ぶくらい、
こうした資料には興味があります。
惹かれると言うか。

創業は安政5年、1858年より。
続いている造りの中での
様々な資料を見る事が出来、嬉しい限り。

Cimg2864

入り口裏に掲げられている、
この看板もまた、たいへんに格好良い。
「イヅツチョー」と言うカタカナ表記。
これもまた珍しく感じます。
「イヅツチョウ」ならば、こう…分かる…と言うか。

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資料館には2階もあり、
更に様々な品物が置いてありました。
これが雀の絵であれば、
落語「抜け雀」にもなりそうな、
立派な「醍」「醐」と書かれた“つい立”…のようなもの。
鬼瓦が付された装丁で、見事な書に思います。

Cimg2867

これもまた見事。
堂々たるもので、「芳醇橆比」と書いてある様子。
「橆」は「無」に同じなので、
なるほど黒澤の酒を表した書なのですね。

ほかに様々な器などが展示されておりました。

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また「井筒長」「黒澤」のラインナップも、
いくつか拝見することが出来ます。


資料館をひとしきり楽しんだ僕とYOKOさんは、
ギャラリー・喫茶「くろさわ」にやって来ました。

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手前が喫茶室、奥が販売所であり、
イベントブースにもなる様です。

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煙突を目印に一段上った所にある建物が、
先程まで滞在していた黒澤酒造。
目と鼻の先に、販売所が用意されています。

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創業時、安政年間から残る建物を改修し、
平成5年にオープンした
「ギャラリーくろさわ」…
こちらで醸された日本酒を購入でき、
信州SAKEカントリーツーリズム、
スタンプを押してもらいます。

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蔵造りの建物の中に、
黒澤酒造の日本酒、焼酎などのラインナップが販売されており、
内部はかなり広く、イベントスペースである事も、
納得の空間。
天井も高く、見える梁、木の質感が良い。

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奥に進むとラウンジもありました。

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数種類、試飲させて頂きまして、
購入した日本酒はこちら。

【 井筒長・特別純米酒 】

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蔵を背景に入れ、写真撮影。

僕が試したのは、運転もあるので、
もちろん甘酒です。
YOKOさんに試してもらい、
強い雰囲気のある「マルト・礎」より、
「井筒長」の特別純米酒を気に入った様でした。


次の蔵元を目指して移動…
…けれど、時間の余裕がない感じ。
下調べの段階では、
東御市の「そば茶屋さくら」が、
今回のコースでは良さそうだったのだけれど、
味わうには、
これから向かう2蔵を通り過ぎねばならないし、
2蔵を経てから向かっては、
営業時間を割り込んでしまいそう。
「そば茶屋さくら」のウェブサイト、
トップページも印刷してあって、
一品追加してもらう準備までしてあったのだけれど…
さーて、どうするか。

Cimg2877

この写真、その結果。
これでお分かりになる方は、
相当に勘所の心得があるお方か、
もしくは経験者さんか。

コンビニご飯になりました。
肉まんを買って、おでんを買って、
もしかすると、
ハンバーガーチェーンや牛丼チェーンのそれよりも、
ファーストフードたるお昼ご飯。
この旅、13回目にして初となる車中食、昼食。

しかしながら、後々として旅を振り返りますと、
この時間経過、スケジュールで良かったんだと感じさせられます。
後の工程、稼いだ時間分、
のんびりとして、満足して巡る事が出来ましたので。


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佐久穂町から佐久市平賀へ。
この後、小海線「中込」駅近くの市街地まで北上し、
なんと「くろさわ病院」なる病院の交差点を東に曲がって富岡街道へ。
中心部から山の方へ向かう道へと伸びて行きます。

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辿り着いたのは「芙蓉」を醸す芙蓉酒造協同組合。
日本酒では「芙蓉」であり、
こと優良でありながら、
更に県内屈指の焼酎蔵でもあります。
特に佐久平の蔵元さんの中には、
蕎麦焼酎を蒸留する蔵元さんが多いのですが、
「芙蓉」が醸す「天山戸隠」は、
全国酒類コンクール・蕎麦焼酎部門にて、
2010年から2011年までの4大会で優勝しているもの。
これは芙蓉グループ内の浅間酒造によって醸されるもので、
自社蒸留はもちろんの事、焼酎の委託製造も行っております。
原料に制限のない免許をお持ちで、
市町村や農協、生産者団体…
日本酒に、普段リキュールにされる農産物以外のものも、
積極的に焼酎として造っておられ、
紙面を賑わせる事もあり、
挑戦する姿勢は素晴らしいものがあると感じております。
ホームページ上に書かれている、
「現在までの対応した焼酎」表には、
No.33まで数えられ、
栗やジャガイモ、
紫蘇の様な他メーカーでも製造されるものばかりでなく、
県の名産「えのきだけ」や、
「えごま」だったり、
表中にありませんが、
去年は波田町の名産品のスイカを使っての焼酎も製造されているはず。

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芙蓉酒造のショップは「依田屋酒店」と言います。
事前にお店の営業確認をする際、
「依田屋の方においでください」
…と教えて頂いたまでは良かったのですが、
実際に、蔵に赴いてみるまでは、
なかなか併設されている販売所と気付かずにいました。
ですから、
インターネット上の地図を見ながら、
直営店か何かなのかなー…
…と言う感覚で、
「行って分からなかったら電話だ!」と考えていたのを覚えています。

そして、
当日は公式Twitterアカウントで、
松本からは分からない佐久の雪情報をお聞きしつつ、
販売場所が依田屋酒店で良いかも確認。

「@fuyou_shuzou おはようございます!
 今日、依田屋酒店の方に県酒造組合の方の
 スタンプラリーで向かいます!
 そちら、雪は大丈夫…ですよ…ね?」

こんなつぶやきを送り、返答を頂いて向かったのでした。

Cimg2884

ショップのある街道沿いの概観はこんな感じ。
敷地の端にあり、内部はおそらく広大なものだと思います。

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店頭に並ぶ芙蓉酒造のラインナップ。
こちらで買う日本酒、
実は旅の始まりから決めていました。

【 酒殿芙蓉・吟醸 】

Cimg2888

思い出のある、この吟醸酒。
さかのぼる事2ヶ月ほど前、
2010年は10月14日に開催された、
「長野酒メッセin長野」にて出会っております。
当時の記録を追うと以下の様。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

【 蔵No.40 / 芙蓉酒造 / 佐久 】

142:☆3.7:芙蓉・吟醸
常温大正解。美味しい。バランスあり、キレイに太く

「これは常温でお試し頂きます」と、
実に丁寧な物腰で注いでもらった142番、
この飲み方は大正解だと感じました。
実に程好く、的確な温度と感じます。
自慢のお酒の良い所を、
ちゃんと理解しておられるのだなぁ、と感じました。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

…そうして蔵の酒を案内して下さった方が、
Twitterも担当されていて、
タイミングが合えばお会い出来る所でしたが、
今回は会うことが叶いませんでした。
けれど、12月、造り忙しい時期に、
時間を割いて頂く事も恐悦至極。
また、時間のある季節に遊びに行ければ良い…と感じています。

販売店の店頭にお立ち頂いた蔵の奥様に、
そんな蔵人さんのお話…
素敵な対応をして頂いた自慢話をさせて頂き、
次なる蔵を目指します。



続いて向かう蔵元は佐久市岩村田。
富岡街道を戻り、少し北上して到着します。

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「よーし!次へ行こう!」
わりかし息巻いて、心地良く店っ先から飛び出した、
そんな直ぐの段階で、踏み切りにて足止め。
けれど、ごく間近で電車を見る事が出来ました。
薄緑色の車体は松本では見られないもの。
右から左、北から南へ、
僕らが進んで来た逆の方向に、
速度を上げながら、流れて行きました。

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こうして広い幹線道路を走っていては想像が出来ない、
岩村田駅周辺、アーケード街…
岩村田本町商店街の一角に、次なる蔵元、
「戸塚酒造店」はありましたが、
1度通り過ぎた上にUターンできず左折などで戻り、
駐車場らしきもアーケード内に紛れて分からず、
交通量も多く、結果、こんなカタチに。

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搬入口か…とりあえず、見えた隙間に頭から突っ込みました。

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屋根続きのアーケード街、
花屋さん、食べ物屋さん、お菓子屋さんと同じ、
軒を連ねて存在しているその中に、
「寒竹」を醸す「戸塚酒造店」がありました。
岩村田は中山道と佐久甲州街道が交わる場所、
商店街のホームページを拝見いたしますと、
商人町の性格を持つ宿場町だったのだとか。
なるほど、この連なりもその一端を感じさせてくれます。

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戸塚酒造店も創業は古く、
承応2年、1653年の創業とのこと。
ショーウインドウには、
歴代首相に書いて頂いている「国酒」の色紙や、
調度品などが飾られていました。
「国酒」の色紙は、
他には茂田井の大澤酒造の資料館でも拝見しましたが、
こうして多く飾っておられるのは、
この両蔵だけ…かなぁ、と旅の中で思います。

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近所の奥様であったり、
埼玉からわざわざ買い求めに来られた方であったり、
店内には商店街の中のお店らしい雰囲気があり、
並べられた「寒竹」ラインナップを見、
選ぶ中にも、町の雰囲気が見え隠れしていました。

【 寒竹・手造り吟醸 】

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購入したのは「手造り吟醸」を。
「草笛」と名付けられた、
蕎麦焼酎やトマト焼酎も、また耳にする事があります。
特にトマト焼酎のラベルデザインは、
シンプルかつ堂々としたもので、
「TOMATO」と言う文字と共に、
赤く鮮やかにトマトが鎮座するもの。

ところで、
埼玉からお見えになった方…
…と知ったのは、
本当に嬉しそうにお酒を買い求められていて、
埼玉から来た…なんて話されていたからこそ。

けれど、その後に、
ちょっとしたハプニングがありました。
ごくほほ笑ましいものです。

お店の方が
僕らが購入した日本酒も一緒に、
埼玉からお越しの方に渡してしまう…と言うもの。
「僕らが買った寒竹が埼玉に旅立つ!?」なーんて、
これはすごい事だ!…と呑気に構えていましたが、
埼玉からの方は、
車に戻られた後に、
「あれ!?1本多い?」
…と気付いて、慌てて戻って来られました。
何蔵も回って来たからこそ分かるのですが、
旅とはテンションが上がるもの、
意気が高揚するもの、
旅の目的が日本酒を買い求めるものである以上、
買った後と言うのはウキウキが最高潮を迎えるものなんですよね。
ですので、僕らも埼玉からの方も、
お店の方もまた商店街らしい、おばさま方の雰囲気で、
過ごさせて頂きました。
もう1年も前の事をこうして書いておりますが、
そんな訳で先立つ埼玉からの客人をお見送りする形になり、
笑顔で運転席に戻って行かれた姿が印象的でした。

さて、以上3蔵、
これにて今回の酒蔵を巡る旅…としての
本懐は遂げた、と言うところ。
これからの時間は、僕が行きたいと望んでいたもの。
塩尻ワイナリーフェスタに参加する様になり、
それまであまり意識していなかった、
信州醸のワインを美味しいと知り、興味が湧く。
興味があるからこそ、
もっと知りたいと考える様になっていた中で望んだもの。

今、ワイナリーが生まれる、
そのために動く方々がいて、
紛れもなく情熱がある…是非、足を運んでみたい、
そう思っていました。
いつか、行ってみたいな…と。
特に日付を決めた訳ではなくて、
何時とも知れない「いつか」と言う心持ち。

訪れた機会…好機は、
想像以上に早くやって来ました。
ワインの勉強、基礎知識なんて、
正直、ほとんどないものだけれど、
でも、それでも得るもの、
感じるものがあるはずだと確信して、
発信された情報に応答致しました。
「思い立ったが吉日」
その後、過ごした時間の素晴らしさを思えばこそ、
当時の自分の判断の正しさを感じています。

東御市と言う存在は、ずっと僕の中で謎めいていました。
どこにあるか分からない。
県のどの辺り?
何となく東の方で…
ラーメンをよく食べていた頃に、
東御市のお店の噂を聞き、行ってみたいと思うけれど、
あまり場所が分からないから、
何となく過ぎてしまって…。
最近、県内情報誌「KURA」なんかを見ると、
小洒落たレストランや専門店が、
どうやら東御市なるものにあるんだ…とだけ思っていた。
信州のクラフトビールを知る様になると、
「OH!LA!HO! Beer」、オラホビールが東御市なんだと知る。
今回、僕らが旅の中で、
望んで出会った「はすみふぁーむ」は、
東御市にある。
「そうなんだ、僕は東御市に、ついに行くのか」
…そう思った。
東御市を知らないけれど、
興味がありそうな事が東御市に多くあった。
故に、辿り着いた。

そうそう、一時期は諏訪の東だとか、
小海あたりを「東御市」だと、
何となく思っていた事もあったんだ。
根拠もなく、何となく。

そんな僕がこの機会に、
”胸を高鳴らせて向かった”と伝えると、
多少の疑問を抱かれるかも知れない。
地名である「袮津(ねず)」も読めなくて、
カーナビに位置を入力するにも、ひと苦労して。
けれど、知らないからこそ、
とてもワクワクしていました。
旅らしい、旅の醍醐味がある。
初めて見るもの、知るものがいっぱいあるんだ。
いろんな事を教えてもらおう、
YOKOさんと一緒に「はすみふぁーむ」にて。

Cimg2900

小学校を目印にして、少し迷ったけれど、
僕らは東御市の高台にある、
この場所に辿り着きました。

Cimg2899

この黄色い建物が目印。
事前に調べた「はすみふぁーむ」Webサイトにも、
この建物が掲載されていて、
「見つけた!」と思って駐車場に入りました。
「14時頃に行きます!」と言っていて、
少し迷った上でも、キッチリ14時と言う到着。
コンビニ飯で良かったなぁ…とホッとしたりもしました。

まずショップにてご挨拶。
蓮見さんご夫妻に迎えて頂きます。
ホームページなどで情報収集する際に、
東御市の市議会議員さんであらせられる事も知り、
少しだけ緊張してドアを開けたのですが、
(もっと言えば、YOKOさんに開けてもらった)
そこには作業着、防寒着の”にっく”蓮見さんの姿。
サイトで拝見したキチッとしたスーツ姿とのギャップに、
ちょっとだけ驚きながら、安心したのを覚えています。

自分自身、
ワイナリーにこうして…
塩尻ワイナリーフェスの様に、
イベントの一端ではなく、
日本酒で言う「蔵見学」の様に、
一対一の応対をして頂く状況で出向くのは初めて。
ワインについて先達て語りたい事もない訳で…
むしろ、教えて欲しい事ばかり。
思うのは「はすみふぁーむ」が、
どの様な場所でこれからワインを醸造して行くのか、
まさに興味があるのは、その一点!
早速、ワイナリー・ツアーに出掛けて行くことになりました。

作業用と思しき軽自動車に乗り込みます。
「狭くてすみません」
…と言って頂きましたが、それは気にならないもの。
こうして時間を割いて案内して頂けるだけで、
「嬉しいなぁ」と思います。
醸造者ご自身によるワイナリー・ツアーは、やはり贅沢。

ほぼ同緯度にあるとは思うけれど、
道なりに進むと山を登り、川を渡り、少し山を下った所にある葡萄畑。

Cimg2903

その後、「はすみふぁーむ」のブログに幾度となく登場する畑。
収穫も、とうの昔に終わり、冬の景色となっていました。
僕らには葡萄の樹の区別すら付かないけれど、
それぞれの葡萄の種類を案内してもらいました。
畑の中に数種類の品種が育っているのだと知ります。
その後、塩尻の五一ワインの葡萄園ツアーでも拝見しましましたが、
どことなくイメージで、
「ひとつの畑にひとつの葡萄品種」と、自分は考えていました。
お米の場合、酒造好適米の場合は、
田の存在、ひとつの田んぼにひとつの品種と言うイメージがあります。
葡萄は樹の存在、一緒に…隣り合って育てても、
あまり影響し合わないのかなぁ…と思いました。

さて、ひとしきり葡萄畑を見せて頂き、
「はすみふぁーむ」のショップまで戻って来ます。

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「では、こちらへどうぞ」

…と言って、ショップの裏手へ。

僕とYOKOさんは、
間違いなく「?」と言う表情であったと思います。
「裏に何かあるのかな」
先に行く蓮見さんの後をついて行きます。

Cimg2905

写真右側に見える張り出した屋根が、
ショップの屋根に当たるもので、
雨樋から先、高い位置に窓が2つあるショップの裏手。
これが「はすみふぁーむ」の醸造所になります。
まだ造りが始まる前の段階、酒造免許を取得する前の段階、
助走、走り掛けている今の段階、
東御市の「ワイン特区」に誕生したばかりの新星に触れているんだと、
本当に体感する事になりました。
大きなシャッターと出入り口の扉。
出入り口の扉は学校の倉庫あたりにありそうなサイズ。
「ここでワインが醸されるんだ!」
新鮮な驚きがありました。
これまで見たどの日本酒の設備より、ずっとコンパクト。

まず、見せて頂いたのは「除硬破砕機」です。

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収穫した葡萄を、まず茎と果実に分ける作業。
先達て参加した塩尻ワイナリーフェス上でも、
城戸ワイナリーで展示してあったのを拝見しました。

Cimg2906

続いての工程、バスケットプレス。
この中に徐硬破砕機を通り抜けた葡萄を入れて搾る。

Cimg2908

中はこんな感じになっています。
内寸ちょうどの蓋を下げて行く事で、圧が掛かる。
まさに圧搾、搾られて行く。
ごく原始的な力。
赤い芯棒は、まるで鬼の金棒の様なガチッとした造り。
これに締め上げられたなら、
たっぷりの果汁が出て来そうな感じですよね。
日本酒で扱う「槽」…例えば佐瀬式の槽は油圧式。
結構な設備なのですが、こうして搾る世界がある…
カルチャーショックを感じながら見ていました。
初めて見る器具、これはとても面白いし参考になります。

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これらが発酵タンクになるそうです。
これにも驚きました。
日本酒では2000リットル級のタンクが使いやすい…と聞いた事があります。
樹脂系のタンクが大、中、小、ステンレスタンクなど、
だいたい200リットル前後の規模でしょうか。
日本酒では、材質はホーロウ製タンクが主体。
更に、物によってはクーリングロール、
サーマルタンクで温度調整を行う設備付き。
ワインと日本酒は同じ醸造酒。
けれど、多く異なる事がある…
知ってはいたけれど、実際に体感すると驚きであり、
何より興味に繋がりました!
見に来て良かった!
そう言えば、ビールも醸造酒。
初めて「志賀高原ビール」玉村本店、
沼津・ベアードビールを見た際に、
その設備は、やっぱり相当に日本酒、ワインとは異なっていました。
「発酵」と言う言葉は同じでも、
三者三様の発酵設備、在り方。
もちろん、味わいも三者三様。
より一層、その魅力に触れた気がしました。


見て来た当時は実際の稼働のイメージが
サッパリ浮かばなかったのだけれど、
ブログで実際の醸造に際して、
どんな風に設備が稼働しているのか、詳細に紹介されていて、
なるほど、
バスケットプレスを使った後は、
搾りかすがケーキの様になるんだなぁ…なんて知る事が出来ました。

さて、お酒と言うものには税がかけられています。
「酒税」と言うもの。
これに関わる事は、つまり国を動かして行く税収の源です。
故に、酒造免許においては、
安定し、かつ円滑に税を納めて貰うためにも、「生産量」の規定があります。
清酒やビールでは毎年60キロリットル、
これを下回る推定生産量では酒造免許を得られないし、
3年間、この生産量を下回った場合には免許の取り消しとなるんだそうです。

さて、そもそも、「ワイン特区」とは?

ワイン特区ゆえに、「はすみふぁーむ」のこの設備、
この規模が存在しています。

「構造改革特別区域法」に設けられた、
「酒税法の特例」により、
定められた地域において、
定められた地域内の特産物を用い、原料として、
果実酒を製造する場合に、
酒税法第7条第2項「最低製造数量基準」である、
年間6キロリットルの生産量が、年間2キロリットルに緩和される…と言うもの。

平成20年11月11日付けで内閣総理大臣から、東御市は認可され、
地域活性化ワイン特区、
「とうみSunライズ / ワイン・リキュール特区」が誕生しました。
次いで県内では高山村が2例目の「ワイン特区」となる見込み。
全国的には北海道の余市町「余市ワイン特区」、
大分県宇佐市の「宇佐ハウスワイン特区」、
もちろん隣県の山梨県にも北杜市でワイン特区があるばかりか、
ワイン産業振興特区として、制度は異なりますが、
ワインをもっと応援して行こう!…と言う取り組みが見受けられます。

「はすみふぁーむ」のブログタイトルには、
「6次産業のパイオニアを目指す」とあります。
これは「1次産業(農業)」+「2次産業(製造)」+「3次産業(販売)」=(足して)6次産業と言う訳で、
この実現、
ひとつの産業を極める事も難しい中、
それらを一体として行うからこそ伝えられる文化がある。
…そう自分には感じ取ることができました。

案内して頂いたワイナリー・ツアー、
品種も「あ、聞いたことがある」程度だった僕ら。
「ワイン特区とは?」
帰りの車内で、その質問を投げかけました。

その中で、
この丘が葡萄畑でいっぱいになれば…
いっぱいになる日が来るんだと教えて頂きました。
ああ、それは情熱溢れる醸造家の手に触れて、
葡萄畑が増え、
醸造家それぞれの個性によって、ワインが育まれて行く。
それはきっと世界に発信され、
行く行く、日本を代表する産地になるかも知れない。
それはすごく面白そうだ。
もちろん、運転をしているからこそ、
蓮見さんは前を向いているのだけれど、
その視線の先、未来への葡萄造り、
ワイン造りの展望を感じました。


醸造所の足元には小さな窓があって、
表…どちらを表と言って良いのか、少し悩みますが、
ショップにも目を通せる様になっていました。
再び、グルッと回って、
ショップであり、テイスティング・カウンターに立ちます。

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僕は勿論、運転があるのでジュースで。
このジュースも、はすみふぁーむ生まれのもの。
巨峰100%の「ぶどうじゅーす」、
非常に濃厚で、
当初、「氷いれましょうか?」と聞かれ、
「いやあ、せっかくの100%、そのまま頂きますよ」と応えたものの、
これが、惜しげも無く本当に濃厚で、
飲みにくい事はないけれど、
もう少しスムースに飲みたい感じ。
何でも、氷の他、スパークリングウォーターなどで割っても良いのだとか。
なるほど、薄めても十分に美味しさに満ちていそう。

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2009年は「はすみふぁーむ」のファースト・ヴィンテージ。
酒造免許は、その後2011年3月に取得したので、
この頃は、
はすみふぁーむ産の葡萄を、
飯綱町のサンクゼールに委託醸造して、
ようやく迎えた記念すべき初年度となっていました。
写真は、シャルドネ。
この時、メルローもテイスティングさせて頂いております。

僕も香は楽しんでいるのだけれど、
「シャルドネ」の香は、特筆すべきもので、
ワインの経験値が少なくて、
こうした香がワインではあるべきもの…なのかも知れませんが、
ショップの紹介文にもある通り、
本当に分かりやすい、感じ易い位置に、
パッションフルーツ、グレープフルーツの香があります。
グレープフルーツは、僕らにはもっと青々とした感覚で、
どこかライムの様な弾ける華やかさを持っていて、
「こんな香、初めてだ!」
…と思いました。
YOKOさん曰く、飲んでみても、その香は健在。
たいへん美味しいのだそうです。
ミントやスパイスの雰囲気が奥にあって、
今飲んでも良いだろうし、
これが年数を経たなら、どうなるのだろう!
それはとても楽しみに感じられるものでした。

メルローは、果実感溢れる雰囲気。
香でも十分に感じられます。
若く、透明感があり、どこかナッティ。
こう、シードオイル系の滑らかさを香から感じます。
YOKOさん曰く、
ワインでも日本酒でも起こる事なのだけれど、
「香と、実際に飲んでみた時の印象が違う」事があって、
はすみふぁーむのメルロー、シャルドネには、それがない。
どちらも「美味しそう!」と思った、
香の感覚をそのまま味わいでも楽しめて、良いね!
…と言っていました。

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即決。
これは買って帰りたい。美味しい香がする。飲みたい。
(ただ、移動中の車内では、
    「良かったら買うけどね!」なんて、
    強がったのか、何なのか、自分は随分と生意気な発言をしていました。
    現地では微塵もそんな気持ちなかったですけれど)
ワインは良いし、元より購入の可能性があったので、
迷う事無く、購入のステージへ上げられました…が、

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ジュースとかジャムとか。
どうしようかな…と。

僕は僕で、食べていたクラッカーに添えられたジャムが、
恐ろしく良い香で。
味もすごく良い訳で。
それもそのはず、先程驚いた「はすみふぁーむ」のワインで煮込んであるんだそうです。
「どれかひとつを買って帰ろう」とは思ったものの、
「いや待て、どれも美味しいんじゃなかろうか」と興味が湧くので、
結果、3種類、全て買って帰り、楽しみました。

【 HASUMI FARM 2009 Merlot 】

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【 HASUMI FARM 2009 Chardonnay   】

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ステンドグラス 調のラベルは、
東御市祢津地区のシンボル「祢津城山」をイメージ化、アレンジしたもの。

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今回のタイトルに使ったのは、
はすみふぁーむがある高台からの風景。
帰りの車内では、YOKOさんがとても上機嫌、大喜びで、
「来年もその先も飲んでみたいと思う」と話していました。

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その後、帰宅してから撮影したジャムとオーシャンウイスキー。
オーシャンウイスキーは芙蓉酒造で購入しました。
はすみふぁーむ、
「バラードジャム」は、
地元産の洋梨「バラード」を使って、
はすみふぁーむ・シャルドネのワインを使って、煮込んだもの。
「ルビージャム」は、
地元産の林檎「ジョナ・ゴールド」を使って、
今度ははすみふぁーむ・メルローのワインを使ったジャム、
「ぶどうジャム」はジュースでも楽しんだ、
はすみふぁーむ産の巨峰を使ったジャム。
購入時、この3種類、どれかひとつを選べませんでした。
どれも惹かれるし、
そして、どれも美味しく頂き、
実家にお土産で渡した分も、とても好評でした。

【  はすみふぁーむ ー 長野県東御市のワイン農家 ー WebSite 】
(  http://hasumifarm.com/  )

「はすみふぁーむ」の公式サイトはこちら。
ブログへのリンクもあります。
ワイナリーの風景が見えます。是非。

実は旅第4回、佐久の旅の頃は、
「はすみふぁーむ」、絶賛建設中の頃合で、
僕はその存在も知らなかった訳で。
近くを通っていても、まだ早かったと思います。
見るべきものを見るべくして感じ取れなかったと思うんです。
「はすみふぁーむ」の建設完了は10月、
プレ・オープンが11月3日だったそうです。
僕らが訪れたのは、12月11日。
2010年のこと…現在2012年に入った今では、
随分と昔の出来事になってしまったけれど、
今、更に発展している「はすみふぁーむ」を知っているからこそ、
書ける事もあります。
今、こうして僕が信州SAKEカントリーツーリズムを振り返っていて、
良かったと感じられる、旅の1日でした。


上信越道「東部湯の丸I.C.」から、
根城のある最寄り「塩尻北I.C」まで、
あっという間の1時間でした。
「こんなにも近いんだ」
…もしかすると、これがいちばんの驚きだったかも知れません。
「再び行くのは大変かも知れない」
そう思っていました。
そんな浅い知識だから、
自分は、東御市ってやたら謎めいていると思っていたんです。
ちょっと足を伸ばせば、遊びに行く事が出来る。
知れば知るほど、信州信濃路は面白い。


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恒例の週末飲みに繰り出した僕らを迎えてくれた松本。
季節はイルミネーションの季節。
ある意味、キーポイントとなって、
すごくお世話になっている縄手通りのある地点。
飲み歩く方には、きっとお分かりになるでしょう。

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千歳橋のイルミネーション。
素晴らしい心持ちで過ごしていました。
より一層、輝いて見える冬の景色。

僕とYOKOさんは旅の最後に、
いつものPub「摩幌美」へ。

特別なウイスキーを楽しむ日となりました。

【  SPRINGBANK / Local BARLEY  】

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a Campbeltown Single SCOTCH MALT WHISKY
Distilled in a Potstill from Pure
BARLEY MALT only

Distilled Feb 66
Bottled Aug 98
Matured in Oak Bourbon Casks

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めいっぱい楽しんで来た1日。

最高のウイスキーで飲み干す。


以上、
信州SAKEカントリーツーリズム、旅第13回はこれまで。
今回は3蔵を巡りましたので、
全76蔵制覇まで、あと13蔵となりました!

「酒産国」たる長野県、またひとつ、その素晴らしさを知る1日。

次回は雪の長野を駆け抜けた、

白銀の旅第14回!

続きます!

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