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2010年5月17日 (月)

喜多方に降り立つ。夢心酒造へ蔵見学!(2009年12月5日・夢心酒造)


「陸奥八仙」も出会ったのはずいぶん前のことで、
今回、蔵見学をさせて頂いた「夢心酒造」の「奈良萬」銘柄、
出会ったのはいつだろうか…
…と考えても、
「前」ってことは分かっても数字で分からない事に気付く。
そう、“ずいぶんと前”ってことだわ。

調べてみると、
「奈良萬」を飲んだ記録の原初は2004年11月9日。
初めて「ぷるーくぼーげん」に行った日、飲んだらしい。

おいおい、ちょっと待ちなって。

東京暮らしから故郷の松本に戻って来て、
今みたいに日本酒が好きになるきっかけには、
確実に「ぷるーくぼーげん」がある訳だ。
手帳を携えて行って、
飲む日本酒飲む日本酒、メモして行った。
心から大切なお店だ。

初めて行った日、
たぶん大将に勧められたんだろう、
「亀泉」と「角太(由利正宗)」と、
そして「奈良萬」を飲んだらしい。
あぁ、何となく思い出す。
「福島」なのに「奈良」と書いてあって、
ちょっと興味が湧いたんじゃなかっただろうか。
純米吟醸原酒、
使用酒造好適米は「五百万石」、
あの頃の僕は、
その後「多摩独酌会」であったり、
秋葉原にあった「じゃのすけ」であったり、
「奈良萬」に出会って行く人生が、
先々にあるとは、気付く由も無く。
至っては新婚旅行と銘打って訪れた喜多方で、
蔵見学に行く現在。

そうだ、思い出した。
初めて訪れた川島酒縁の会、
「日本酒フェスティバル」…
井賀屋酒造場、
木屋正酒造などと初めて出会った
2005年に夢心酒造とも出会っている。
当時の日記を読むと、
「ぷるーくぼーげんでよく飲む銘柄」
「どれを選ぼうか迷った時は、奈良萬か美寿々」と書いてある。
2004年の11月から2005年の7月までで、
相当、「奈良萬」の世界に引き込まれていったみたいだ。

―――…更に記録を読み返すと、
フルネット社の「純米酒フェスティバル2005年春」にも、
「奈良萬」が出展していて、いの一番に試飲しているっぽい。
記録があるから記憶が蘇って来る感じ。
“随分と前から”の自分を思い出す。

おっと。
長くなりました。
昔話はここまで。

2009年12月旅行記第5弾。
福島県は喜多方市「夢心酒造」訪問記。


「八戸酒造」と「居酒屋がんこおやじ」、
八戸を楽しみ尽くした翌朝。
JR八戸駅。

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会社用のお土産を買うべく、
駅構内併設の土産物コーナーを物色。

Cimg8217

駅の売店で「奥入瀬ビール」なるものを発見する。
記念に1本、自分達用にお土産。

会社用に購入した、
青森市「はとや製菓」の「蜜りんご」、とても好評でした。
( http://www.a-hatoya.com/shopping.html )
名産品であるリンゴを蜜で煮た後、
温風で一昼夜乾燥させたお菓子…と言うか、
グミキャンディ、ソフトキャンディとも違う、
自然の恵みを生かした仕上がりのリンゴ。
甘味もくどくなく、
リンゴらしい食感もありつつで、かなり気に入りました。
味見をした訳ではなかったから、
予想外の反応に自分でも食べ、
美味しかったから、Ykさんに持ち帰ったくらいです。
“お土産のお土産”みたいな状態。


Cimg7990

途中の新幹線の社内で、駅弁タイム。
これもちょっと楽しみにしていたのです。

【 大間のマグロまっしぐら・津軽海峡弁当 】

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【 三陸八戸大漁市場 】

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それぞれ量は少なめ。
もう1個買っても良かったかも。
そう思うのは味が上々であればこそ。

続いての道中、新幹線は郡山まで。
郡山からは磐越西線を使って行きます。

Door_pict

青森のJR八戸線の電車は、
「八戸酒造」の蔵見学時にも書いた通りで、
2重ドアになっていたけれど、
福島の磐越西線は、松本と一緒でした。
いわゆる、ボタンを押すタイプ。
旅をしている今だからこそ、
松本への懐かしさ、ちょっとだけ覚えます。


【 喜多方駅 】

Cimg7993

2009年12月初旬、喜多方駅は目下、改装工事中でした。
5ヶ月以上経った今では、
きっと綺麗にリニューアルされている事でしょう。

会津若松駅で、
Ykさんのお友達のKkさんと合流します。
会津路でお世話になった方。
本当は旦那さんのN田さんも蔵見学に参加予定でしたが、
仕事の都合で夜からの合流となりました。

Cimg7995

タクシーで数分、目的地に到着です。
途中も工事中の街の中であったけれど、
流石、喜多方ラーメン屋さんも多く、
時代を感じさせる建物が並ぶけれど、
信号機などの機械類、
広い道、狭い道、混ざり合った感覚が、
そう全て初めて見るものと言う感覚が旅を思わせました。
この「夢心酒造」の看板は、
「ようやく見ることが出来た」と言う喜びと共に。

Cimg7994

地域の安全を祈る、啓蒙する看板。
しっかり「夢心酒造株式会社」のロゴも。

「夢心酒造」ホームページには、
その酒銘の由来が書かれています。
( http://www.yumegokoro.com/yurai/yurai.html )

特約店で売られる「夢心」とは別のブランド、
「奈良萬」の由来は、
ご先祖様が奈良出身である事から付された屋号「奈良屋」に由来し、
また蔵元家系に代々「萬」の字を名付ける決まりである故なのだそうです。

地元喜多方であれば「夢心」の看板が多く見受けられ、
蔵元は特約店ではないので、
今日訪れた蔵元では「奈良萬」を購入できません。

地元、長野県松本市で見掛ける「夢心酒造」の日本酒、
また東京で出会う機会が多いのは「奈良萬」銘柄。
「夢心酒造」の「夢心」に出会うのは、
この地、会津喜多方に訪れてこそ、と言う感覚です。

【 夢心酒造・蔵見学 】

案内して頂いたのは代表取締役社長の萬太郎さん。
よく東京でお会いする御方です。

Cimg7996

まず見えてきた朝日蔵2号。

Cimg7997

奥に朝日蔵1号。
「夢心」「奈良萬」はこの建物で醸されています。

Cimg7998

入り口直ぐに見えた通称「薮田」…
薮田式自動醪圧搾機。
僕らが訪れた日も搾りが行われていた様で、
粕剥がしの作業中でした。
漂う香は酒造りのシーズンを実感させてくれます。

外履きから内履きに履き替えて、階段を上り蔵の中へ。
スチール製の階段を上って行きます。
例えば、
旨い酒ならば歴史ある建物から生まれる、
伝統の技法、木の歴史をも吸い込んだ日本酒。蔵の風情…
…そうしたものでなくては、
良い酒が出来ないのか、と考えると、それは否。

スチール製の階段を上っていく時、
それでも僕はきっと、
知っている「奈良萬」の美味しさの面影を、
伝統に訴えかける様に思っていたんだと思います。
造りは古きに頼るから美味しいのではなくて、
蔵元さんの努力と継続から成ると知っているつもりであって、
実感していなかったのでしょう。

もし、
「夢心」、「奈良萬」を醸す蔵元でなければ、
どこか穿った見方をしたかも知れない。

僕はこの場所から醸される日本酒を知っていて、
それが大好きである。これは間違いない。

幾許の葛藤を持って階段を上り切った先の光景に出会いました。

上り切った後、また下がります。
製造工程の初段、
お米を洗い、蒸す場所に案内してもらいました。

Cimg7999

まず見えた、目に飛び込んで来たのは、
この大きな機械、装置、設備…
どの言葉が適当であるだろう。
過去、見て来た中では「真澄」宮坂醸造の諏訪蔵や、
「神渡」豊島屋さんで見て来た蒸米機。
洗米を終えた酒米が入り口に乗せられ、
ベルトコンベヤー内をゆっくり通る間に蒸し上げられ、
出口からほかほかの蒸米として、
仕込みに使われるべき形として出て来る。

僕の中のイメージでは、
大きな造りを行う時に使われるもので、文明の利器。
対照的に同じ蒸米機でも、
甑(こしき)と呼ばれる道具を使う場合は、
正に酒蔵の風景のイメージに近く、
小仕込みであり、
生産量が少ない蔵元が主に持っている設備と言うイメージ。
前述した2蔵も甑との併用でした。

故に、
この連続蒸米機と他に甑があるものだと思いましたが、
全ての造りは、この連続蒸米機で行われるらしい。

Cimg8003

蒸米機の中には、網が張られています。
下から蒸気が当てられる為の通気性高い仕様。
細かい網目が織り重なってピカピカに光って見えました。

Cimg8004

蒸米機、出口。
稼動時は、
ここから次々と蒸し上げられた酒米が出て来ます。

「 うちは麹室がないんですよ 」

蔵元、萬太郎さんは言います。

日本酒の原材料として表示されているのは、
少なくとも「米」「米こうじ」の2項目。
米はそのまま記された通り。
もうひとつの絶対必要要素に「米こうじ」があり、
そのまま名の通り「麹室」で造られる。

「麹室」は蔵元に無くてはならない施設だが、
「夢心酒造」には存在しないと言う。
寸時、冗談かとも思えたけれど、
萬太郎さんはとても自然に当然に言う。

麹室は蔵の心臓部で、
限られた人しか入れず、
特に仕込みが行われる冬場、
蔵見学で見せてもらえる場合は少なく、
また僕らも迂闊に入りたいとは思えない。
僕ら外部の人間が持っている菌で、
麹、もやし…彼ら種菌の生育の邪魔をしてしまうかも知れないから。
とても大切な場所で、
清潔に保たなければならない場所。
例えば、杜氏が麹菌を振り撒く際、
共に室に入る蔵人は、息ひとつに気をつけて、
微動だにしてはいけないとも聞く。

Cimg8005

連続蒸米機、出口付近。
夢心酒造、ここで麹菌を撒きます。

Cimg8007

そして「自動製麹装置」の中へ。
銘盤には「自動製麹盛棚」と書かれている。
設計、製作は株式会社佐々木貞治商店とのこと。

Cimg8008

内部は棚に覆い尽くされていて、
この中で48時間、麹が造られます。

麹が生育する事に関して必要なのは、
温度、湿度の管理。
麹室で作業する場合は、
常に麹の品温に注意してやりながら、
時に風を送り、熱を抱き、
環境を調整してやります。
寝ずの番をする事もあるでしょうし、
蔵人が住み込みで冬に働く理由でもあるでしょう。

Cimg8009

自動製麹装置と言うシステムである以上、
そうした管理、機械仕掛け。
「麹室」がないのは、この機械の活躍ゆえ。

“ そんなに機械頼りで良いのか? ”

…と読まれてお思いの方、いらっしゃるでしょうか。

この時、僕は事実をただ疑いも無く受け止めていました。
「そうなんだなぁ」と。
常に思うのは、
これが美味しいと思っている「奈良萬」の酒の誕生の地であり、
生み出している道具であり。
結果は数年のお付き合いで、よくよく知っている。
「奈良萬」の「純米・無濾過生原酒“中垂れ”」なんて大好物だ。
「純米大吟醸生」の「中垂れ」なんて大大大リスペクトの1本だ。
だから、全てこれは正しいと思い、揺るがない。
これまで見て来た蔵元さんとは明らかに違う造りの設備。

「技術とは何か?」と考えた時、
伝統、歴史、正攻法、通説、作法…
色々あるのだろうけれど、
基本的には年に1度しかない造りのシーズン、
どれだけの事を試し、どれだけの結果を学び、
次の造りに反映できるか、美味しい日本酒を目指して行けるか、
積み重なったものが「技術」だと思い知らされた。

「経験」と「技術」は等しくさえ思う。

聞いていたことだし、知っていたことだし、
酒造にだけ言える事ではないし。
けれど、蔵見学を終えた今、
こうして手記を調えている中で、再び感慨深く思う。
学びと言う体験を。

酒造りの工程から辿ると逆順になってしまうけれど、
洗米の設備がこちら。

Cimg8001

このタンクに米を入れる。

Cimg8000

洗米をし、浸漬し。
蒸される状態になった酒米は、
このベルトコンベヤーを伝って、
先ほどの連続蒸米機に運ばれるのだ。

Cimg8002

「限定吸水」はこのザルで行う。
流れ出る、タンクに流入する米を拾って、
浸漬時間を調整し、
麹や掛米、目的に適した水分を保ってもらう。

大変な労力です。水流と共に落ちるお米の重たさ、
そもそも厳寒の季節に行われる、
冷たい水との格闘。

仕込み映像で目にする、
ストップウォッチで号令一波で「限定吸水」を行う事と比べると、
労力の負担は実はあまり変わりないのかなぁ。
そう、どちらもとてもたいへんなのです。

続いては醗酵室へ。

Cimg8010

ここで夢心酒造の醪(もろみ)たちは成長する訳です。

「ここで」と書く言葉が宙を浮く感覚、そんな写真。

一見、何も無い空間。
左手に見える機械が、
醪の品温を厳密に管理できるシステムの制御装置です。

Cimg8013

中に入って行くと、数字の付いた穴が開いています。
この数字が醪日数にあたり、発酵日数となります。
中を覗くと見える生命の神秘。

Cimg8011

作業中であった杜氏さんにも挨拶させて頂き、
タンク内に醪の顔を見るため、電灯を落として、
その表情を見せて頂きました。

Cimg8012

手で仰ぐと、発酵の風を感じることが出来ます。
ふつふつと呼吸を行う面。
写真中央に見える銀色の物体は撹拌する為のアームです。
「櫂入れ」と言う作業工程、
長い柄の棒を持ってタンクを掻き混ぜる姿を、
CMだったり酒蔵のHPなどでも見掛けますが、同じ効果を持つもの。

どこの蔵でも蔵であればたいてい同じ構造だと思います。
2階にこうした開口部があり、
1階はタンクが立ち並ぶ構造。
それを知っていても、萬太郎さんの「NASAとも呼ばれる」場所、
見るまでは実感無かったですよ。

Cimg8015

通称「NASA」だそうです。
なんとも機械構造物っぽい。
開放部、タンク上部に対する、
地上1階、タンク下部、立ち並ぶ底部。
丸い底部は、醪の対流に向くそうです。
発酵により醪全体に対流が生まれ、呼吸が行き渡る。

Cimg8017

壁には現在の「夢心酒造」より前、
「東海林酒造場」のロゴの入った温度計がありました。
見ているのは室温。

Cimg8018

これはタンクに差し込まれた最新鋭の温度計。
タンク壁を貫通し、醪に到達しています。
このデータを吸い上げて、
制御装置が醪の温度を調整するのです。

主な造りの場は以上!
実に新鮮でした!

Cimg8019

洗瓶機などのフロアを経て。

Cimg8021

貯蔵室。こちらは蔵造り。
こちらの方が何だか酒蔵っぽく感じられますよね。
見てきた全て、酒蔵に違いないのですが。

Cimg8022

凄まじい勢いで貼り付けられて行くラベル。
なかなか考えられて造られていました。
そう言えば、こうして稼動しているのを見るのは初めてです。
移動と共に糊が塗られ、ラベルが貼られ。

【 甲斐本家蔵座敷 】

Cimg8023

帰りの時間まで余裕があると話すと、
萬太郎さんは、
周辺の観光スポットまで連れて行ってくれました。
ありがとうございます!

実はこの流れがあればこそ!
続いて、素敵なお店に出会う事となるのです。
既に旅行から半年あまり。
季節は夏に移ろい行く今だけれど、
まだまだ12月旅行記は続きます!

お土産に買ってきた日本酒は以下の様。

【 福島・夢心・純米“夢の香” 】

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福島県内限定品と言う、
福島県開発の酒造好適米「夢の香」を用いた日本酒。

【 福島・夢心・純米大吟醸 】

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夢心酒造の醸す「夢心」、最高峰の一角。

【 福島・奈良萬・純米無濾過生原酒おりがらみ 】

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帰宅後、特約店、新潟の「カネセ商店」さんから購入したもの。

以上、
福島県喜多方市「夢心酒造」の蔵見学史でした。
萬太郎さんを始め、蔵元の皆様、本当にお世話になりました!
これからも美味しい日本酒、待っています!

【 夢心酒造HP 】
【 http://www.yumegokoro.com/ 】

日本酒は文化の一端。
文化の一端を醸す事が出来るのは、光栄だと言った蔵元さんがいました。

文化は伝統に等しい言葉に聞こえるけれど、
近代、日本酒が美味しいのは、
冷蔵技術の発達を始め、技術の進歩があればこそだと思います。

三重県・「鈴鹿川」「作」の銘柄を醸す「清水醸造」を、
蔵見学させて頂いた時にも思ったけれど、
「美味しい日本酒を提供するには?」の命題を元に、
原料処理から仕込み、醸しまで、
「どうすれば良いか」を考えた時に、
最も適した方法を常に目指して行く考え…
そんな蔵であると「夢心酒造」にも感じられました。


東京都は大塚の「地酒屋こだま」、
「四季酒の会」のたけさんのブログに、
同「夢心酒造」の蔵見学記事があり、
先立って蔵見学をされた長野の「仙醸」蔵の蔵見学記事が、
非常に面白かったです。
自分が見て来たものと重なる長野の蔵元。
ご興味あれば、是非。

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