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2009年8月23日 - 2009年8月29日

2009年8月29日 (土)

軽井沢よ、君はこのまま眠ってしまうのか(2009年7月20日・メルシャン軽井沢蒸留所)


1929年:サントリーが「サントリーウヰスキー白札」を発売。

1935年:昭和酒造(後のメルシャン)が川崎工場を竣工。
    (ただし、蒸留はまだ行われていなかったとされる)
1939年:大黒葡萄酒株式会社が軽井沢農場開設。
1940年:ニッカウヰスキーが「ニッカウヰスキー角瓶」を発売。
1946年:「オーシャンウィスキー」発売。
1949年:「昭和酒造」が「三楽酒造株式会社」と社名変更。
1952年:大黒葡萄酒株式会社が塩尻にてウィスキーの製造開始。
1955年:軽井沢農場内に、軽井沢蒸留所を建設開始。
1956年:軽井沢蒸留所が操業開始。
1961年:三楽が山梨に蒸留所を建設。
1961年:「三楽酒造」が「日清醸造」を吸収合併。
     「メルシャン」ブランドを傘下に。
1962年:「三楽酒造」が「オーシャン株式会社」を吸収合併。
     「三楽オーシャン」と社名変更。
1976年:シングルモルトウィスキー「オーシャン軽井沢」発売。

1984年:ニッカウヰスキー「シングルモルト北海道」を発売。
1990年:メルシャン株式会社と社名変更。
1995年:メルシャン軽井沢美術館設立。

2000年~現在:操業停止

2007年:メルシャン、キリンホールディングスに吸収。

2008年:ベンチャーウィスキー社「秩父蒸留所」蒸留開始。

大黒葡萄酒=オーシャンであり、
昭和酒造=三楽=メルシャンである。


全4回の「pub.摩幌美」、
「モルトの会」ツアー秩父日記、今回がラスト。

第1回「秩父蒸留所」
( http://sake-soja.cocolog-nifty.com/blog/2009/08/2009719-52fd.html )

第2回目「食堂パリーと秩父神社川瀬祭」
( http://sake-soja.cocolog-nifty.com/blog/2009/08/20092009719-6f9.html )

第3回目「Bar Snob、可奈居屋の夜」を経て、今回が第4回目。
( http://sake-soja.cocolog-nifty.com/blog/2009/08/2009719bar-snob.html )


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秩父の夜を楽しんだその後、翌朝。
僕とYkさんは、
出発前にホテル周辺を散策してみる事に。
僕らだけでなく、
酋長も川瀬祭のクライマックス、
「御輿洗いの儀式」を見てきたと仰っていた様な。

秩父の山は切り崩されているのか、
段状になっていて、
森広がる長野生まれの自分には、
初めて見る山の姿。
剥き出しの岩肌がある峠だってあるけれど、
山そのものを裸に見るのは驚きと新鮮さと。
写真では映し切れなかったけれど、
実際に間近で見ると、
切り出しの鋭角跡が確認でき、
何か一種の神殿の様にも見えます。

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よく晴れて蒸し暑さも出て来た秩父路。
歩道橋に登って風を受けます。
今回の旅の中でも、特にお気に入りの1枚の写真。

秩父を離れ、
途中のサービスエリアでお昼ご飯。
達磨のお弁当を購入しました。

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フタを開けるとこんな感じ。

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群馬の素材を集めて造ったそうです。
なかなかにボリュームもあって満足。
赤い達磨は貯金箱に、
白い達磨は…何かしらの物入れになりますネ。



再び、
Kenchieさんが運転する車に乗り、
辿り着いた場所は軽井沢。

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秩父との空気の差を感じる、
“日本の避暑地”らしい雰囲気は、風の涼しさ。
例えば「蒸し暑さ」には、水分や蒸気を思い浮かべるのに、
軽井沢を流れる風には、
霧を空気に溶け込ませた朝の清々しさに似る…
けれど、「ひんやり」し過ぎて寒いと言う事もない、
何とも言えない過ごし易さを感じます。
日差しの強さは晴れやかで変わらず、
逆行する熱である光、その対照、避暑地として愛される所以なのだと。

メルシャン軽井沢蒸留所および、
メルシャン軽井沢美術館の庭にて、
そう言えば、初めて辿り着いた軽井沢の地を感じます。

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緑に染まるウェルカムハウス。

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酋長は蒸留所見学の担当者さんへの挨拶に。
待つモルトの会の面々は、
緑を眺め、涼しさにひと呼吸です。

そして軽井沢蒸留所ツアーへ。

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ウィスキーの世界では、
蒸留を休止することは、そんなに珍しくないと思います。
そして復活、再開する蒸留所も少ないながらも、
珍しくはないと思います。あり得ない事ではない。
最近は新設される蒸留所も増えていて、
話題に上る事が多くなった印象もあります。

新設蒸留所には、もちろん「秩父蒸留所」もあり、
アイラ島の「キルホーマン(KILCHOMAN)」も話題です。
キャンベルタウンに復活した「KILKERRAN(キルケラン)」…
グレンガイル蒸留所のウィスキーも先日「摩幌美」で楽しみました。
この蒸留所の復活については、
「摩幌美」の「酋長」自身のホームページ、
「Wonderful Scotland」に記事があります。
( グレンガイル蒸留所3周年パーティ「蘇った蒸留所」 )
( http://www.mahorobi.com/j/topic/glengyle.html )

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この建物が蒸留、
他にも発酵などを行う場所です。
こちらにも建物を覆う様にツタが生い茂っていました。

はて、自分が休止中の蒸留所を見学すると言う今、
稼動していないのに、
見る事が出来る…矛盾はしていないけれど、
どこか不思議な感覚。

動いていないのに見に行くと言う感覚が、
きっと、どこか不思議に感じたのではないでしょうか。
「これから」と思える未来が遠い…と言うこと。
「これからが楽しみだ!」と言う気持ちを持ち帰った秩父蒸留所に比べ、
あまりに「これから」が見えて来ない。
「見る意味は?」と自問していたのかも知れません。

見る意味は、“見た時”にこそ感じました。


工場の様に見える、
火の落ちた発酵槽などの区域を経て、
蒸留区域へ。

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ツタが生い茂る。
1956年当時から蒸留所と共に育ってきたのでしょうか。
蒸留所の今は成長ではないけれど、
ツタは今も育ち続けている。

中に入ると…

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全4基のポットスチルがありました。
もちろん、稼動していません。

磨き上げられたばかりの、
秩父蒸留所のポットスチルとは、
大きく違って静まった印象。
まるで博物館の様な…。
何か昔の何かを展示するそれの様な。

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本来ならば蒸留されたニュースピリッツは、
ポットスチルの向こう側へ運ばれて行く事でしょう。


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そして貯蔵庫へ。
ウィスキーの香が密やかに風に流れて行きます。
「白州蒸留所」で体験した、
強く濃密な「ウィスキーが眠っている場所」の香ではなく、
乾いた空気の中に、
ほんの少し赤い色、ワインとかシェリーとか…
そんな熟成の香を感じる程度。

壁一面の樽。
高さもあり、広さもあり、十分な量の樽を熟成できます。
写真に映る樽も壮観ですね。

だからこそ、
それは寂しさであり悲しい気持ちに似た落日の光。
まるで楽しかった日曜日に、
月曜日からの避けられない憂いを思い浮かべる様。

2000年に操業を停止して以降、
少しずつ少しずつ樽は確実に減っているのです。
生産がなく、消費されていくだけ。

壁となった樽の奥はただ空間も多く、
熟成庫が熟成庫らしく、
その全ての“貯蔵する”と言う機能を果たしていない。
ウィスキー樽達の母としての偉大さを全うできていない。
減り続ける一方なのです。

蒸留再開の目処は立っていないそうです。

いや、もし、
残り4ヶ月ほどの2009年に、
奇跡の大復活を遂げたとして、
そのニュースピリッツを飲むことが出来るのはいつ?
熟成庫で程好く樽色を纏うまで、
枯渇せずに、
蒸留所は生き続けているのか?

未来が見えないと言うこと。

見る意味は、なんだ?

なんだと思う?

そう自問する。

見る意味は、「知る」と言う事だろう。

…と答える。

「知って、もっと知りたいと思った」

…と、

秩父蒸留所の回、冒頭に書いた。

メルシャン軽井沢蒸留所の今を知る。

軽井沢の未来を見る為には、どうしたら良いのだろう。

僕に何が出来るか分からないけれど、
こうしてブログを書いている。

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では、この樽はただ転がっているだけなんだな…と思う。

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この自然の中で生まれ、育まれる、
僕らと同じ、
いや僕ら以上に自然と共に育っているウィスキー。
この軽井沢で生きるウィスキーを飲みたいと思う。

僕らの未来は自分の足で見て行くけれど、
軽井沢蒸留所の未来は誰の足で歩いて行くのだろう。

少なくとも、
共に向かった「摩幌美・モルトの会」の面々は、
飲み手として、
「軽井沢」のウィスキーを飲む準備は出来ている、と思う。
もし、「軽井沢」が歩き出したら、
共に歩き、飲む…心から応えたい、と思う。


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「No.1962」は「三楽オーシャン」の設立記念樽でしょうか。
これは使われなくなった小型のポットスチル。

あの4基のポットスチルの未来が、
こうならない事を願わないではいられない。

あの4基が先代を引き継いだように、
次代へ続いて行くためならば、良いのだけれど。


蒸留所見学を終え、オープンテラスのカフェで一息。

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メルシャン軽井沢美術館も見学し、
思い思いに過ごしました。

今回の旅のお土産として、1本、購入です。

【 Chateau Mercian 】
【 KIKYOGAHARA MERLOT 】
【 Eau de Vie de Marc 】

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「桔梗ヶ原メルロー」

稼動停止直前、
最後の蒸留…と言うか、
再溜を行ったものが、このボトル。
「マール」と呼ばれるワインの搾りカスを蒸留したもの。
イタリアでは「グラッパ」と言う名称ですネ。
「マール」はフランスでの呼ばれ方。


全4回で書いてきました、
「pub.摩幌美」、
「モルトの会」ツアー秩父、軽井沢蒸留所記、
これにて完結です。

実に有意義な休日を過ごすことが出来ました!

酋長をはじめ、
関係する全ての皆様、ありがとうございました!!

日本の蒸留所の現在と未来。

それを感じる旅に感謝です。

さぁ、
今宵もビール、日本酒はもちろん、
ウィスキーを飲みましょう。
楽しく美味しく、
素晴らしい香の世界へ。

長い旅行記、
読んで下さった方にも大きな感謝を。

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2009年8月23日 (日)

そして秩父の夜へ。(2009年7月19日・Bar Snob、可奈居屋)


それは旅を癒す。


前々回の日記から続いている、
「pub.摩幌美」の「モルトの会」ツアー。
第1回「秩父蒸留所」
( http://sake-soja.cocolog-nifty.com/blog/2009/08/2009719-52fd.html )

第2回目「食堂パリーと秩父神社川瀬祭」を経て、今回が第3回目。
( http://sake-soja.cocolog-nifty.com/blog/2009/08/20092009719-6f9.html )


「摩幌美・モルトの会」の面々は、
「食堂パリー」から、
道向かいの「Bar Snob」へ移動しました。

【 Bar Snob 】

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夕刻の「Bar Snob」の前。

この建物も「食堂パリー」と同様に、
登録有形文化財の指定を受けています。
「食堂パリー」が「カフェ・パリー」と言う名であったように、
「Bar Snob」も登録は「旧大月旅館別館」とされ、
建築年代は大正15年なのだそうです。
「パリー」同様に木造2階建てで、
写真を見ると2階の窓の上にもスペースがある様に見えますが、
これは外壁を高く持ち上げたデザインなのです。

店内は広く、
まずテーブル席が出迎え、僕らはそこに腰掛けました。

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テーブルから隔ててカウンターが見えます。
この構造なら、
テーブル席が賑わっていても、
ひとり、もしくはふたりでお見えになるお客さんも、
自分の時間が持てるかも。

【 ミント・ビア 】

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僕は更にビールで。
メニュウにあった「ミントビア」を、
生ビールの「レーベンブロイ(Lowenbrau)」で作って頂きました。
Ykさんは「サイドカー」、次いで「アレクサンダー」を。
みなさん、思い思いのカクテルやウィスキーをお願いしていました。

【 MWR Ichiro's Malt Mizunara Wood Reserved 】

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次いで、
「秩父蒸留所」でYkさんが気に入った、
「MWR」を思い出と共に頂きました。

注文する時、
カウンターに出向いて「MWRはありますか?」と聞くと、
つい最近リリースされたリーフラベルの「MWR」があり、
それをオススメされるのですが、
「実は、今日秩父蒸留所に行ってきて…」
…と気に入った「MWR」の事情を話すと、
「肥土さんも、そのカウンターに来てくれたりしますよ」とのこと。
カウンターに座って、
他のお客さんとも気さくに話してくれる…なんてお話を聞きました。
僕が見てきたイチローズモルトも、そうした印象。
“舶来のウィスキー”と言う名の、
どこか手が届きにくい印象があるウィスキーではなく、
秩父のウィスキー、日本のウィスキー、
手に取り易い、
秩父の土と風を感じられる…
それは肥土氏が作っているからこそ、その人柄に届けられるモルト。

スコットランドに行った事がない僕が想像する、
アイラの風、スペイサイドの大地は空想でしかないけれど、
写真でしか見たことがないけれど、
秩父の風、秩父の空、秩父の山はちゃんと思い浮かべる事が出来る。

日本酒を飲む時もそうですネ。
「イメージできるか」が大切だと説く方もいます。
地酒と言うのだから、
地の味とのイメージ、地の雰囲気を酒に湛えているもの、
例えるなら、
飲むだけで旅が出来るような、地域の個性を持つものこそ「地酒」である…と。
美味しく楽しく飲みながら、
そうした日常にはない味わいと気風を味覚で楽しめるのは素敵だと思います。

日本に新たに誕生した蒸留所を見てきたと言う実感を、
グラスの中に見つめます。

これまでもこのボトルは多くの方に愛されて来たのでしょう。
ラベルの四隅をセロハンテープで張ってありました。
愛されていくだろうイチローズモルトに、
この「Bar Snob」でも出会う事が出来て良かったです。


【 可奈居屋 】

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せっかく秩父に来たのだから…
…と有志で続いて向かったのは、こちら。

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「ノスタルジィ」と言う言葉を思い浮かべる、
「純喫茶」とも言いたくなる様な雰囲気。
亡きご主人が愛し集めたボトルを分けてもらう場です。

【 MACALLAN CASK STRENGTH 10 Years old 】

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僕がお願いしたのは、
思い出のボトルだったのか未開封のもの。
流石にそれを開けてもらうのは気が引けたので、
こちらを。
Ykさんは珍しい洋ナシのオー・ド・ヴィーをお願いしました。

ママさんひとりで切り盛りするお店。
ゆったりと時間を過ごし、秩父の夜を楽しみました。


この可奈居屋さんに向かう途中は、
まだ祭の屋台が賑わっていたけれど、
帰る頃には、暗い道。
まさに“火が消えたように”、人の影もなく、
猫が一匹、ふらっと歩いて行くだけ。
祭の後を感じる気配の中を歩いて帰りました。

そうそう、
西武秩父線「御花畑」駅の横を通りました。
東京に居た頃、「どんな駅なんだろう」と、
実際に行きはしないけれど、
興味を持った駅にも出会えて、
酔いすがらの道、嬉しく思っていました。


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